鈴木 悦久 :《クロマティスト》
Suzuki, Yoshihisa:Chromatist
解説 : 鈴木 悦久 (609文字)
16世紀から17世紀、ルネッサンス音楽からバロック音楽の過渡期において、半音階を多く用いた作曲家を後に、"Chromatist"(クロマティスト)と呼んだ。彼らクロマティストたちの書くマドリガーレは、声部の半音階的な動きと和声的様式や不協和音の効果的使用により、詩の内容を深い情緒の中に表現したと言われる。この作品は、半音階(クロマッティック)をモチーフにしたゲームを、コンサートの場において、その場で解くことで楽曲として構成されるものである。このゲーム(作品)を解く(演奏する)ためには、ピアノ(鍵盤楽器)の鍵盤上で起こるクロマッティックな音の動きを、思考と身体に直接結びつけていなければならない。17世紀の"Chromatist" たちが、各々の表現手段として半音階を自由自在に操ったのと同じように、この作品(ゲーム)のルールにおいての思考と身体で半音階を操るのである。それらの行為が、演奏者が自ら発した音を演奏者自身や、その空間、人に反響させ、次の音を紡ぎだす際に生まれる即興空間のように、ゲームのルールによって生じる事象となって、この作品における音楽空間を形成していくのである。もしも、この作品(ゲーム)を演奏する人が自由自在に演奏(解く)することができたのなら、それは17世紀の "Chromatist"と同じく、現代の "Chromatist" と呼ぶにふさわしいのではないかと思い、このタイトルをつけた。
《クロマティスト》
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