伊澤修二 / L.W.メーソン :へとつ

Izawa, Shuji / Mason:*in preparation*

作品概要

作曲年:1883年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★
総演奏時間:3分50秒

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (844文字)

更新日:2015年5月12日
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《へとつ》は、《かぞえうた》を主題とする変奏的ピアノ独奏曲である(注1)。《かぞえうた》は、もともと江戸時代から歌われていた俗謡で、明治期以降、徳育、戦争、色事など様々な題材を読み込んだ歌詞が付けられた。『幼稚園唱歌集』(音楽取調掛、1887年)、『小学唱歌』(大日本図書、1893年)等に掲載されている。  これらの唱歌集を編纂したのは伊澤修二である。彼が生を受けたのは江戸時代。アメリカに学んだ後帰国し、今日へと連なる我が国の音楽教育を土台から築き上げた。伊澤の音楽教育開拓の業績は広く知られている。彼は音楽取調掛(東京音楽学校の前身)を設置すべく奔走し、東京音楽学校(現在の東京藝術大学)で初代校長を務めた。伊澤の後ろ盾となったのがアメリカの音楽教師L.W. メーソンである。伊澤は唱歌集に掲載する楽曲の選定や作詞・作曲を行う上でメーソンの力を借りた。《へとつ》も伊澤とメーソンの合作であるとみられる。  《へとつ》は、93小節の中で繋がりゆく各音が次々と新たな展開をみせる、聴きごたえのある作品だ。日本に西洋音楽が導入されて間もない黎明期にこの曲を聴いた人々の驚きは、一体いかばかりのものであったろう。  東京藝術大学附属図書館には、明治時代から受け継がれてきたとされる《へとつ》の楽譜がある。緑色の表紙には「HE TO TSU」という題簽が貼付されており、右下には音楽取調掛の押印も見受けられる。  《へとつ》が演奏された記録はほとんどないが、CD『日本のピアノ変奏曲選~伊澤修二から大中恩まで~』(演奏:秦はるひ、ミッテンヴァルト、2013年)には、近年録音された貴重な音源が収録されている。 注1《へとつ》は冒頭に ”Introduction” があり、主題の提示がなされた後にその旋律が姿を変えてゆく。但し、主題と各変奏の小節数が一致しているわけではなく、変奏部分がわずかであるこの作品を、厳密な意味での変奏曲と規定できるかどうかは、「変奏曲」の定義にかかわる問題である。

執筆者: 仲辻 真帆

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