第1楽章(アレグレット):ト長調、8分の6拍子。楽章全体を通じて、とりわけピアノの響きが非常に薄く、その代りに素材となっている旋律線や音程が際立つように書かれている。冒頭に単旋律で現れる主題は、D音で始まるリディア旋法で書かれ、古風な印象を与えるが、続いてヴァイオリンに受け継がれたときには、Aで始まるフリギア旋法書かれている。フリギア旋法の特徴は、短調に比べて第2音が半音低いことで、ここではB♭音を指すことになるが、一方のピアノパートはそのB♭音を主音とした変ロ短調のトレモロで伴奏し始める。さらに、その変ロ短調の第3音であるD♭をC♯と読み替えた鋭い音型が10小節目に立ち現れる。これが楽章全体に現れる2つ目の素材となっている。
練習記号2の小節からは、協和する音程を敢えて外したような新しい旋律が現れ、その旋律に派生して長7度を並べた音型がピアノパートに現れ、これでこの楽章を特徴づける素材が概ね揃うこととなる。その後には一転して、ほとんど空虚5度(完全5度)の重音しか用いていないピアノパートと、シンプルなヴァイオリンの旋律が入り、再び主題が現れるのを待つ。この練習記号4番12小節目までの流れを提示部だと考えると、練習記号4番13小節目~練習記号11番1小節前が展開部、練習記号11番~楽章終わりが再現部となったソナタ形式とも捉えることが出来る。
第2楽章(ブルース):4分の4拍子。ピアノパートが変イ長調を基本に始まっているのに対し、ヴァイオリンが半音下のト長調で始まっていることや、ピアノかヴァイオリンのいずれかが拍を刻む役割を担っていることで、ブルースの引きずるようなリズム感が強調されている。ヴァイオリンが、ブルーノートを用いたブルース調の主旋律を提示したのに対し、ピアノはシンコペーションのリズムを効かせた旋律で応じている。練習記号6番からはピアノに付点の効いた新しい音型が現れ、バンジョーを模したようなヴァイオリンのピッツィカートも音に厚みが増す。練習記号9番で主旋律がffで奏されることによって、楽章はクライマックスを迎え、やがて主旋律の断片を残す形で収束してゆく。
第3楽章(無窮動):ト長調、4分の3拍子。第1楽章と第2楽章に比べてはるかに短い楽章だが、冒頭が、第1楽章で効果的に用いられていた鋭い音型を変形させたもので始まることから、前2つの楽章を総括するような役割を果たしていると解釈することが出来る。実際、楽曲がクライマックスへと達した練習番号16では、第1楽章の主題をGで始めたと思しき旋律がfで登場する。また、練習番号6番から主導権を握るようになる3拍目に強拍を持った旋律や、ト長調の音階の第7音であるF♯が往々にしてF♮に低められていることは、第2楽章に由来したものだと考えられる。終始休みなく動いているヴァイオリンパートは、終いには、オクターブの跳躍、さらには完全5度とオクターブの大きな跳躍へと発展し、華やかな終止へと向かう。