シュルホフ, エルヴィーン 1894-1942 Schulhoff, Ervin
解説:小崎 紘一 (920文字)
更新日:2010年1月1日
解説:小崎 紘一 (920文字)
歴史に殺された作曲家として、或いは優れたジャズピアニストとして認知されていた以前と比べると、現代のシュルホフ像というものは、徐々にリアルタイムのそれに近づいてきたように思える。とはいっても、シュルホフに向けられたこのふたつの評価は確かに誤りではなく、むしろ彼という作曲家像の中でも大きな要素を含んでいる。
1894年に生まれるということは、20歳という年齢で第一次世界大戦を経験し(実際に戦場へ赴きもした)、40代というひとりの成熟した人間として新たな大戦と向き合わなければならなかったことを意味した。そしてチェコに生まれ、ドイツ系ユダヤ人であるということは、ある時は国内の支配者層として、またある時はホロコーストの対象として民族間の争いを生きるということを意味した。そして事実、シュルホフは終戦を待たずして収容所で息を引き取り、「退廃音楽」の烙印を押された彼の音楽もまた、共産圏という名の収容所に永い間閉じ込められることになる。
激動の時代と共に産業も急速な進化を続けていた。音楽家にとってコンサートホールに加えて新たな表現の場となったのが、ラジオとレコードという新たに作り出されたメディアであった。そしてシュルホフはそれらに着目、積極的に関わった人物であり、最新のモードであるジャズを取り上げる。生放送が主流の当時のラジオ番組において、卓越した名人芸を電波に乗せたシュルホフの音楽と名前は人々に広く知られていった。更には数々の自作のレコーディング、楽譜の出版。シュルホフがジャズとのクロスオーヴァーにおいて大きな実績を残したのは間違いではない。ただ、ひとつのジャンルに収まるほど彼の作風は特定し易いものではない。
第一次大戦から戻ったシュルホフは反戦主義ひいては共産主義に傾倒していく。そこに芸術家の志向性としてダダイズムを絡めながら、あくまで根底に流れるのはヤナーチェクにも通じるチェコ音楽である、という彼の音楽は普遍性を持ちながらも他に代わるもののない非常にユニークな表情を湛えている。シュール、攻撃的時に露悪的、それでいてポピュラーであるという彼の特徴が最も魅力的に鳴らされているのが、一連のジャズ曲を含めたピアノ作品だといえるだろう。
作品(11)
ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) (1)
協奏曲 (2)
ピアノ独奏曲 (4)
ソナタ (2)
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