作品概要
出版年:1934年
初出版社:Alphonse Leduc
献呈先:Carol D. (in memoriam)
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:種々の作品
著作権:保護期間中
解説 (1)
解説 : 西原 昌樹
(1008 文字)
更新日:2025年10月16日
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解説 : 西原 昌樹 (1008 文字)
《黄道十二宮》の直後に書かれた小品集。12曲よりなる。献辞に à Carol D. (in memoriam) とある。出版譜にはそれ以上の情報はないが、高弟のマルク・オネゲルによると、ミゴの友人であった指揮者ワルター・ストララムの幼い孫(Carol Dimas)の夭折を悼んで、遺族への慰めのために書き下ろしたものという。譜面にあえて記されなかった以上、成立事情を知っていることが演奏の必要条件にはならないが、いずれにせよ特別の背景を背負った曲ということになる。funèbre といった標語も見えるが、全体に決して悲嘆に沈むようなものではない。むしろ、暗い翳りはあっても、子供の発する生命力、純真な聖性をいきいきと描き出す。心からの慰霊には力強ささえ宿るのである。オネゲルはこの曲を《黄道十二宮》と共にミゴのピアノ曲の最高傑
作に位置づけたいとした。この意見に賛同したい。確かに、両作は規模も傾向も全く異なるものの、12曲が一つのサイクルをなす点で共通し、かたや永劫に繰り返される大宇宙の天体の運行を、こなた限りある生を生きた小さな人間の内面に拡がる小宇宙を描き切っているのだから。両作の初演を一人のピアニスト、アンナ・ウラーニ(Anna Urani)が担った事実も興味深い。第1曲 Modéré 3/4、第2曲 Décidé mais souple et chantant 3/4、第3曲 Allant 4/4、第4曲 Allègre 6/8、第5曲 Vite 3/4、第6曲 Modéré, allant 3/4、第7曲 Décidé, rythmé 3/4、第8曲 Modéré 2/4、第9曲 Allant, comme un prélude 7/4、第10曲 Allant, funèbre 2/4、第11曲 Allant 15/8、第12曲 Décidé 2/4。ウラーニによる全曲初演は1934年12月11日、サルガヴォーにて。ウラーニは前年(1933年)、単独で《黄道十二宮》の全曲初演を果たした大ヴィルトゥオーゾであった。本作でもどれほど霊感みなぎる演奏を聞かせたことであろうか。