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アルベニス :スペイン(思い出)

Albeniz, Isaac:Españna(Souvenirs)

作品概要

作曲年:1897年 
出版年:1897年 
初出版社:Universal musical, Barcelona
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:10分00秒

解説 (1)

執筆者 : 川口 成彦 (1195文字)

更新日:2010年1月1日
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《スペイン(思い出)》は1897年頃に書かれたと思われる作品で、〈前奏曲Preludio〉と〈アストゥリアスAsturias〉の2曲から成る。この作品は同時期の《ラ・ヴェガ》と同様に《イベリア》に見られる音楽的特徴を垣間見ることが出来る。すなわち〈エヴォカシオン〉や〈ヘレス〉を予感させるような神秘的な旋律、そして半音階進行から生まれる独特な和声、そして《イベリア》的サウンドの源とも言えるような対位法的書法である。もちろんそれらはまだ、《イベリア》のように複雑ではないが、アルベニスがこの時期には初期の作風とは違った「第2の書法」を確立していることがこの作品から理解出来るだろう。また、〈前奏曲〉の調性はフラットが5つの変ニ長調であることも注目すべきかもしれない。《ラ・ヴェガ》や〈エヴォカシオン〉が変イ短調であるのが典型的な例であるが、1897年頃からアルベニスは実にフラットの多い調性を好んだものだ。1897年の歌曲集《ロッティの散文による2つの小品》にもフラットへのこだわりは見られるように、これはピアノ曲に限ったことではなかった。《スペイン~思い出~》の〈前奏曲〉はこの変ニ長調の調性と作曲者の半音への意識から《イベリア》同様にダブル・フラットが多く見られる。繰り返すようだが、それはアルベニスが《イベリア》へと発展を遂げる予兆と言えるのかもしれない。

〈前奏曲〉は8分の12拍子で速度表示はアンダンティーノである。曲「ppp」で始まり、29小節変わることのない伴奏音型の上に神秘的な旋律が歌われる。そして徐々に声部が増えていき「f」に向かって華やかになると、突然「ppp」の世界に戻り、今度は高音部が和音によって伴奏を奏で、低音部が主題を歌い始める。その歌はクレッシェンドを伴って高音部に引き渡され、その雄大なメロディーを変ニの持続低音とテノール声部の半音階が支える。しかしそれもほんの一時。歌は静けさの中に消えていき4つの「p」を伴う静寂に収まる。そしてまた冒頭部を思い出したかのように、「ppp」の中でほとんど変わることのない低音部の伴奏音型の上に旋律が歌われて、曲の終わりへと向かう。〈前奏曲〉はCarmen Sertという人物に捧げられている。

〈アストゥリアス〉は嬰ヘ短調の曲で、4分の3拍子、速度表示はアレグレット・マ・ノン・トロッポである。寂しげな旋律がコラールのように歌われて曲は始まるが、その後はバス声部の上にテノール声部が旋律を奏で高音部が2声(時折3声となるが)の旋回する響きによって装飾を行う場面、低音部のアルペジオの伴奏に乗って高音部が和音で旋律を歌う場面が続く。そして再びコラール風に旋律が歌われるセクションへと戻り、静けさの中で曲は終わっていく。情熱的なアンダルシア地方の雰囲気とは全く違う北部スペインの独特な空気がこの曲には流れていると言えるだろう。

執筆者: 川口 成彦

楽章等 (2)

前奏曲

総演奏時間:6分30秒 

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アストゥリアス

総演奏時間:3分30秒 

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