4曲あるピアノ協奏曲の中では、あまり知られていない。ラフマニノフがモスクワ音楽院に通っていた時期、1890年~91年にかけて作曲された。音楽院のピアノの師、アレクサンドル・ジロティに献呈された。1917年、ラフマニノフはこの曲の改作にとりくみ、現在演奏されている形になった。改作といっても非常に徹底的な改作であり、原作とは大きく異なる作品になっているようだ。ラフマニノフは、この改作を最後に、ロシアを離れ、アメリカに移り住むことになった。
第1楽章:ヴィヴァーチェ 嬰へ短調 4分の4拍子
ファンファーレに続く冒頭部分は、グリーグの協奏曲を思い起こさせる。ヴァイオリンからピアノにうつされる第1主題は哀愁を帯びており、美しい。ヴァイオリンで奏される第2主題はピアノで装飾されながら、もりあがりをみせる。展開部では自由な変化をみせながらクライマックスを形成する。後半、53小節にわたるピアノ・ソロはききどころであり、この後コーダに入る。
第2楽章:アンダンテ 二長調 4分の4拍子
はじめにピアノがソロで奏でるまとまった旋律がこの曲の中心になっている。全体的におだやかで幻想的な楽章。全体を通して、一つのモティーフが使用されている。
第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ 嬰へ短調
冒頭、8分の9拍子と8分の12拍子が交替に登場し、独特のリズムが印象的である。4拍子の軽快な主題がピアノで登場し、その後管弦楽とかけあいながら発展をみせる。中間部でみられる主題は、ラフマニノフらしく、センチメンタルで美しい。再現部を経て、華やかなコーダを形成し、最後は力強く曲をしめくくる。