ホーム > ピアノ曲事典 > チェルニー(ツェルニー) > フーガおよび多声音楽演奏のための教則本

チェルニー(ツェルニー) :フーガおよび多声音楽演奏のための教則本 Op.400

Czerny, Carl:Die Schule des Fugenspiels und des Vortrags mehrstimiger Sätze Op.400

作品概要

出版年:1837年 
初出版社:Diabelli
献呈先:Herrn Musik Director Felix Mendelssohn Bartholdy
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:教則本

解説 (1)

執筆者 : 上田 泰史  (1353文字)

更新日:2011年5月13日
[開く]

フーガは西洋芸術音楽における伝統的な多声書法であり、18世紀、J. S. バッハによってその技法が高度に体系化された。フーガによる楽曲は複数の独立した声部からなり、主題が各パートで順次提示され、モチーフが拡大、縮小、断片化されたり、ときには反転・逆行されたりしながらパズルのように巧みに組み合わせられ展開する。鍵盤楽器に適用されたフーガとして最も名高いのは2巻からなるJ. S. バッハの《平均律クラヴィーア曲集》であることは言うまでもない。全ての調性による前奏曲とフーガによって構成されるこの作品は今日ほど一般に知られてはいなかったものの、鍵盤楽器教育においてチェルニーの世代にいたるまで伝承され教材として用いられていた。

この練習曲集は、バッハの《平均律》の校訂版と同じ年に出版されている。恐らく彼は1830年代後半にバッハ作品の校訂作業と同時期か、あるいはかなり近い時期にこの曲集を書いたのであろう。チェルニーは編集した《平均律》にメトロノーム速度、楽想、運指、スラー、スタッカートなどを加えたが、この作品400においても同様にテンポを厳格に指示し、指番号、リタルダンド、アクセント記号などを入念に書き込んでいる。

ところで、なぜチェルニーはこの作品を単に「前奏曲とフーガ」とは呼ばず、フーガ演奏の「学習Schule/Etude」と名付け、練習用作品と位置付けたのだろうか。フーガをはじめとする多声音楽の演奏においては、指を書法に従わせなければならないために、薬指と中指の交差や同じ指の連続的な使用など多くの変則的な指使いが要求される。交錯する複数の声部を自在に10本の指で捉え、しかも速いスピードで演奏し、かつ全ての声部で提示される主題を際立たせ作品の構造を音に変換するには、繊細かつ敏捷な指のコントロール、楽曲の構造と性格を読み取る分析的な視点、読譜能力が要求される。こうした素質はいずれもチェルニーが重視した教育的観点であり、その統合を可能にするのが《フーガ演奏の学習》作品400なのである。チェルニーが出版譜に掲載した序文によれば、上のような演奏意図があるゆえに、それぞれの曲に書き込んだ指示(とりわけテンポと指使い)には十分な注意が払われる必要があった。いずれの曲もテンポは速く、手の交差、跳躍、オクターヴ、三度の連続など、同時代のピアノの効果を最大限に引き出す同時代的なピアニズムと、厳格な伝統的声部書法が見事な融合を果たしている。この点、本作品はテクニック教育の集成であると同時に、チェルニーの伝統に根ざした芸術家としての気概を全面に押し出した大作である。

曲集は4巻からなり、それぞれの巻にはプレリュードとフーガが3組ずつ6曲収められている。《平均律》とは異なり全調を網羅するわけではなく、調性の配列にも特別な意図は認められない。前奏曲の多くはポリフォニックに書かれており、様々な性格の小品ないし練習曲の体裁をとる。続くフーガは、しばしばその主題が前奏曲のモチーフと関連付けられた濃密なポリフォニーである。前奏曲とフーガを集めた曲集としては、他にリストに献呈した全調による姉妹作《古典様式のピアニストー全24の長短調による前奏曲とフーガ》作品856がある。F.メンデルスゾーンに献呈された。

執筆者: 上田 泰史 

楽章等 (12)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

動画(0)

解説(0)

楽譜(0)

楽譜

楽譜一覧 (0)

現在楽譜は登録されておりません。