気持ちよく続くバルカロールのリズムを背景に聴きながら、美しく素朴な歌が歌われます。右手の歌は、朗々と歌うというよりは、非常に親密に優しく語りかけるように歌われることが適切です。これはこの曲が収められている「音の栞」や他の三善晃氏の作風から感じられることによります。長い音を、柔らかく伸びの良い音で演奏しましょう。中間部は、和声の緊張と緩和を十分に味わいましょう。中間部になると左右の関係性は強くなります。左手の和声に誘発されて右手が反応し、全体の響きを作ります。左が伴奏、右がメロディだからといって、左右が独立してそれぞれにならないように、全体の調和を聴きましょう。
ペダリングは非常に繊細さが要求されます。どれくらい足に重さをかければ響きがどれくらいつくか耳を鋭敏にし、様々なピアノや場所で実験してみてください。補助ペダルを使用の方もぜひハーフペダルや細かい踏み分けにもチャレンジしてみることで、響きを作り出す楽しさを感じてほしいと思います。