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シューマン :序奏と協奏的アレグロ  Op.134 ニ短調、ニー長調

Schumann, Robert:Konzert-Allegro mit Introduktion d-moll、ニー長調 Op.134

作品概要

作曲年:1852年 
楽器編成:ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) 
ジャンル:管弦楽付き作品
総演奏時間:12分30秒

解説 (1)

総説 : 上山 典子 (1301文字)

更新日:2018年3月12日
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独奏ピアノと管弦楽のための《序奏とアレグロ・アパッショナート》Op.92から4年の年月を経た1853年、43歳のシューマンは再び同じジャンルで創作することになった。その作曲は8月24~30日のわずか一週間に行われ、演奏時間およそ12~13分の単一楽章作品が仕上がった。初演は同年11月26日にユトレヒトにて、シューマン自身の指揮、妻クララ(1819-1896)の独奏で大成功を収めた(このオランダ訪問は、シューマン夫妻の最後の演奏旅行となった。またシューマンの死後、クララがこの協奏曲を公の場で演奏することもなかった)。  この曲は当初クララを念頭に創作され、実際、1853年9月13日に34回目の誕生日を迎えた彼女に贈られていた。しかしそれからおよそ2週間後の9月30日、当時デュッセルドルフに住まいを構えていたシューマン一家を、20歳のヨハネス・ブラームス(1833-1897)が初めて訪問した。そして突如現れたブラームスの才能に興奮したシューマンは、この協奏曲をその若き才能に献呈した。  また良く知られているように、シューマンはこの年の秋、自身が1834年に創刊して以降10年余りにわたって編集を務めていた『音楽新報』Neue Zeitschrift für Musikに「新しい道 Neue Bahnen」と題した評論を寄稿し、ブラームスを新進気鋭の作曲家として世の中に紹介した(1853年10月28日号 巻頭記事)。  初版はピアノ独奏とオーケストラのパート譜がライプツィヒのゼンフ社から1855年7月に、総譜は1887年になって同地のブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された。編成は次の通り――独奏ピアノ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン(テナー)、ティンパニ、弦5部。 【序奏】 22小節からなる序奏部分(かなりゆっくりと、ニ短調、3/4拍子)は、弦のピッツィカートによる4小節の導入句の後、独奏ピアノが付点リズムで始まる抒情的な主題を提示する。この旋律は主部においても重要な役割を果たしていく。 【主部】 序奏から切れ目なく移行する主部(生き生きと、ニ短調~ニ長調、4/4拍子)は、ソナタ形式を基本とする。主題はシューマンが得意とする効果的なアクセントとシンコペーション・リズムから成る。平行調のヘ長調で入る副主題は、山田耕筰(1886-1965)の童謡《赤とんぼ》を思いおこさせる旋律で、歌唱的な性格を持つ(1927年に曲付けされた《赤とんぼ》がシューマンの曲を引用したという証拠は何もないが、偶然の類似であれ、部分借用であれ、この旋律は我々にとってとりわけ親しみやすく感じられる)。展開部、再現部の後には、華麗なカデンツァ、コーダが続く。  全体を通して流麗な分散和音が多く、曲の抒情的性格を深めている。しかし技巧的でピアニスティックな独奏楽器だけでなく、厚みのあるテクスチュアのオーケストラから生み出されるシンフォニックな響きは、「新しい道」ブラームスの後の2曲のピアノ協奏曲を先取りしているようにも聴こえる。

執筆者: 上山 典子
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