ローゼンブラット :2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ
Rosenblatt, Alexander:Concertino on 2 Russian themes
執筆者 : 加藤 麗子 (1087文字)
日本国内において「二人羽織」と俗称されることもある大変人気のある作品。この作品は「ピアノ連弾」「ピアノと弦楽器」「ピアノとオーケストラ」の3つのスタイルで存在する。この連弾編は、1999年~2000年にかけて日本で開催されたピアノデュオ作品による第5回作曲コンクール(国際ピアノデュオ協会主催)において、ローゼンブラットが特別賞・毎日新聞社賞を受賞したときの作品である(そのときは来日していない)。本作品には世界的にもよく知られるロシア民謡「カリンカ」と「モスクワの夜」のメロディが使われている。この2つの主題は、ジャズ風なリズムやハーモニーの動きと共に、ストラヴィンスキーのごとくロシア民族の特徴を生かしながら、ロマンティックな趣で組み合わされている。最終盤、もう1つのロシア民謡「コロブチカ」が“不協和音トレモロ”よろしくpiu mossoで唸りをあげてクライマックスを迎える。二人の爆速ピアニストのシンクロ、それも溶け合うことなく一体となる世にも奇妙な“協奏”を是非ご覧いただきたい。このようにローゼンブラットは自身の全作品に渡って独自の和音を多用し、ローゼンブラット節もしくはローゼンブラット訛りの様な旋律を展開する。あのユニークな勢いを持つ本家ロシア民謡を血筋に持ち、その血脈を西洋音楽の言語に落とし込んでいると言えよう。また本作品も、観客側が聞くという行為だけに留まらず、見て楽しむこともできる妙技(ローゼンブラットはpiano stuntsと言っている)がいくつも使われている。これは素晴らしいヴィルトゥオーゾ的技術を包含しているだけではなく、この人目を惹きつける華やかさはコンサートを企画するピアニストにとっても重宝される。ピアノ1台、ピアニスト2人という条件があってはじめて可能ではあるが、高いエンターテイメント性が発揮される。
==(筆者コメント)====================================
私は2005年3月11日のローゼンブラット初来日公演の折、この作品を2台8手=ダブル・ピアノ・デュオで演奏したいと申し出た。ローゼンブラットから「それは面白いパフォーマンスだ!」という返事をいただき実行した。ただし曲の最初から最後まで2台8手という訳ではなく、前半は1台4手で演奏され、二人羽織のシーンからローゼンブラットらが加わり、クライマックスで2台8手となった。私はこの経験をもとに2005年7月24日、12人によるリレーパフォーマンスを行った。ピアノという楽器の可能性が膨らむユニークな作品であり、また比較的弾き易いのが嬉しい。
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