寂しげな雰囲気の漂う対位法的な舟歌です。付点のリズムがきつくならないようにしましょう。この付点のモチーフは、順次進行がほとんどですが、たまに跳躍があります。波打ち、舟が大きく揺れるようにその動きを表現してください。左右のフレーズは、冒頭のように先に左、後から右の時や、5小節目アウフタクトからのように先に右、後から左の時もあります。そして、フレージングは長いものも、とても短いものもあります。それらによって描き出される波の様相を感じてください。11小節目から、上行形でクレッシェンドし、左手の大きな跳躍の後、fのクライマックスに行き着きます。強い心情が映し出されるようです。そうして、次第に穏やかさを取り戻し、19小節目から寂しげな元の主題が右手から入ってきます。波の描写や見捨てられた小舟の様子と共に、人物の心象風景を描いているような作品だと思います。