12月「地に平和」

 チャイコフスキーの12月「クリスマス」が華麗なワルツであるのに対して、「地に平和」は、ソ連との戦争中に作曲された作品であるため、戦時下の悲哀が如実に表現されている。戦死者へのレクイエムであり、静謐に満ちている。

 冒頭は調性を曖昧にして、前奏はA音が低音で保続される。戦死者の葬列を想起させる重々しい音が淡々と、一音ずつ表情を変化させながら連なる。

 ３〜19小節は中音域の和音で描写され。厳粛に内声が微妙に変化して行く。経過句で次第に上行し、束の間の光を煌めかせ、ピアニッシモに向かう。12〜22小節では、teneramenteとなり、高音域で微かに希望を見出すように描く。ト長調に転調するも、直後にト短調に転調し、繊細で悲哀に満ちた静かな旋律が続く。コーダは、平和への祈りを込めた厳かな和音で終結する。