中田 喜直 : 小さい手のためのピアノ曲集 7. 変奏的練習曲
Nakada, Yoshinao : Piano Pieces for Little Hands *in preparation*
作品概要
ジャンル:子供のための作品
著作権:保護期間中
解説 (1)
解説 : 齊藤 紀子
(1194 文字)
更新日:2007年8月1日
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解説 : 齊藤 紀子 (1194 文字)
1966年に、桐朋学園大学音楽学部付属「子供のための音楽教室」のために作曲された。主題と9つの変奏から成る(初めは8つの変奏であったが、後に1つ付け加えられた)。イ短調で書かれているが、日本の音階に基づくメロディーにイ短調で和声づけしているといったほうがふさわしいであろう。
主題は4分の4拍子で、「ソステヌート 堂々と」と記されている。13小節と短いながらに、3部形式で書かれている。
続く第1練習(変奏)曲は、同じく4分の4拍子で、メロディーが左手に見られる。再現では、右手にメロディーが戻る。
第2練習(変奏)曲は、4分の4拍子、4分の3拍子、4分の5拍子が混在している。そして、片手の音階、両手の音階、両手の反行する音階を中心としている。
第3練習(変奏)曲は、4分の3拍子であるが、左右共にヘミオラやポリ・リズムが見られ、規模もやや大きくなる。この変奏の終結音にはフェルマータが付されている。
第4練習(変奏)曲では、イ長調で和声づけされている。拍子も2分の3拍子となり、冒頭に「美しく、うたうように」と記されている。また、用いられるディナーミクの幅がp-ffと幅広くなる。この変奏の終結音にもフェルマータが付されている。
第5練習(変奏)曲では、アレグロとなり、イ短調による和声づけに戻る。拍子は4分の4拍子で、推進力のある変奏となっているが、4拍目に4分音符が置かれることが多く、せき止められながら進む感じが醸し出されている。
第6練習(変奏)曲は、ffで開始し、7連音符によるユニゾンの音階が特徴的である。また、8小節目の最後の音にフェルマータが付され、その後ダブル・バーを挟んで、リタルダントの指示された3小節が続くことも興味深い。
第7練習(変奏)曲では、一転して、「アダージョ・エスプレッシーヴォ ゆっくり落着いて 充分に表情をこめて」となる。拍子も4分の3拍子となり、この変奏を終結させる音にはフェルマータが付されている。全体的に多声的に書かれている。また、上行音形で終結することが非常に印象深い。
第8練習(変奏)曲では、一転して、「プレスト 非常に速く」となる。主題が様々な音高に分割されていることが特徴的である。2分の2拍子で8分音符による3連音符を中心としているが、この変奏の最後は、上行形の5連音符の積み重ねが上昇していく。また、この変奏の終結音にはフェルマータが付されている。
第9練習(変奏)曲は、この作品全体のフィナーレで、一転して、「マエストーソ」となる。実際に、重厚な和音で書かれており、幅広い音域の間を跳躍する。また、第6練習(変奏)と同様に、ffで開始する。イ短調による和声づけが支配的であったこの作品全体は、この変奏の最後のハ長調の主和音で閉じる。
以上のように、曲全体の終わりに近づくにつれて、各変奏間の性格の変化がより色濃く強調されていく構成になっている。
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