平吉 毅州 : 子どものためのピアノ曲集《虹のリズム》 夏の夜のハバネラ
Hirayosi, Takekuni : Rainbow Rhythm Summer Night Habanera
作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(750 文字)
更新日:2025年10月24日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (750 文字)
タイトル通り夏の夜に漂うような甘くほのかな香りを感じさせる作品です。「甘やかな懐かしさを込めて」とあるとおり、冒頭2小節の高音で奏される同音連打のシンコペーションは、遠くからそっと響くような柔らかさがあり、この響きによって一気に作品の世界観へと引き込まれます。続く3小節目ではテヌートを伴って再登場しますが、あくまで現実味を帯びないよう、ペダルをうまく用いて音を溶け込ませるような響きを目指すと良いでしょう。
左手にはハバネラの特徴的なリズムが現れます。2拍目裏から3拍目にかけての上行スラーでは、後ろの音が目立ちすぎないよう注意しながら、全体としてはリズムの明快さを保つことが大切です。7小節目からはクレッシェンドによって音楽が次第に広がり、8小節では内声とソプラノの重なりが豊かな響きを生みます。9小節からはバス音がdesに変化し、そこから次々に変化していきますが、それぞれの和声の色合いを意識して、滑らかに移行したいところです。
15小節目ではfに至り、右手のメロディーと内声の同音シンコペーションが重なり合って、充実した響きが求められます。21小節目アウフタクトからはへ短調へと移り変わり、それまでとは異なる情緒が現れます。右手には「con forza」の指示があり、芯のある音で強い意志を持って弾くと、この場面の性格が際立ちます。25小節目以降では高音域に移る旋律と内声とのアンサンブルが鍵となり、甘くなりすぎないようにバランスを取ると効果的です。
27小節以降は分散和音によって元の柔らかな雰囲気へと戻り、39小節からは冒頭との繋がりを意識しながら、再び遠くから響いてくるような音色を意識したいところです。コーダでは旋律が重音や和音で奏され、音楽全体がより豊かに、余韻を残して締めくくられます。
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