作品概要
ジャンル:ベルスーズ(子守歌)
総演奏時間:1分30秒
著作権:保護期間中
ピティナ・ピアノステップ
23ステップ:応用7 発展1
楽譜情報:1件解説 (1)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(1017 文字)
更新日:2025年10月23日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (1017 文字)
静かに揺れる拍の中で、豊かな多声音楽としての魅力を味わいたい作品です。冒頭から終始、穏やかに流れる子守歌のリズムが全体を包み込みますが、その中に複数の声部が織り重なり、内声まで丁寧に歌うことが求められます。特に、バスにテノールの音が加わり、科西部でハーモニーを作る時、響きが痩せてしまわないよう、たっぷりと厚みのある音で支える必要があります。テノールにテヌートの指示があるのも、その充実した響きを意識させるためといえるでしょう。
指先だけで音を作るのではなく、指の腹や腕全体の重み、しなやかさを活かして響かせることが、音の豊かさにつながります。6小節目に見られるようなテノールの八分音符の動きは、風が起こるような感触があり、それに応えるように右手のアルト旋律も柔らかく連なっていきます。そうした横のつながりを意識しながら演奏することで、音楽の流れに自然な推進力が生まれます。
またこの曲では、左手に多くの強弱記号が記されている点も特徴的です。4小節目からや13小節目からのように、左手に書かれた記号によって、そこから全体の音楽的な表情が広がっていくように感じられます。ペダルと合わせて、左手の柔らかくも芯のある音をよく探りながら、響きのバランスを整えたいところです。
14小節目からは、和声が少しずつ変化を見せ、今までとは異なる景色に誘われるような展開になります。19小節目の右手の主題のメロディは1拍目から明瞭に歌い出し、続く21小節目の左手の同様のフレーズと自然に呼応するように配置されています。こうした声部のやり取りを明確に表現することで、曲全体の構造が立体的に浮かび上がってきます。
23〜26小節では、小さな揺れが繰り返される中で、アルトに現れる主題前半のモチーフをさりげなく、美しく響かせたい場面です。繊細な音の変化を丁寧に感じ取りながら、過度にならず、自然な呼吸で音を紡ぎたいところです。そして27小節目からは、調性が変わり、シャープ系の明るさが加わることで、視界がぱっと開けるような印象に転じます。左手の伴奏形もそれまでより動きが増し、音楽が新たな展開を迎えます。
全体を通して、調性や音型の移ろいに伴って、心の風景が徐々に変化していくような印象を持つ作品です。単なる子守歌という枠に収まらず、そこには深い情感と詩的な世界が広がっており、それを演奏者自身が味わいながら表現していくことが、この曲の魅力を引き出す鍵となるでしょう。
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