作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(653 文字)
更新日:2025年10月23日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (653 文字)
更新日:2025年10月23日
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ト短調で書かれ、冒頭に「やさしく、いたわるように」と指示があります。その言葉のとおり、寂しげな表情をもって演奏することが大切です。特徴的な付点のリズムは強調しすぎると堅さが出てしまうため、柔らかさを意識したいところです。また、スラーが短い単位でかけられているため、終わりの音を軽く切らずに丁寧に保つことで、「ひとりぼっち」という孤独な雰囲気が自然に表れます。18、20小節では同じ旋律が繰り返され、想いが次第に強まっていくように感じられます。そして22小節からの下降音型でpoco ritを伴いながら、26小節の変ロ長調へ移る場面は、現実の寂しさから一時的に抜け出し、過去の幸福な情景を思い出すかのようです。この部分では左手にも付点の旋律が多く現れ、対位法的な書法が際立ちます。冒頭の付点よりも軽やかに、スラーの終わりの音をやや短めにすることで、楽しげなニュアンスを加えることもできるでしょう。26小節から34小節までは、8小節を大きな流れとしてとらえたい部分です。34小節からmfとなり、音楽は一段と意気揚々とした性格を帯びます。さらに37小節から左手にかけてクレッシェンドが書かれ、40小節の充実した和音に至りますので、左手の響きを大切に扱うことが求められます。45小節以降は再現部としてト短調に戻りますが、44小節からmfで左手が重音を伴って力強く響き、51小節以降では左右の手による付点旋律の対話が繰り広げられます。こうした流れの変化を丁寧に描き分けることで、この曲の陰影がより深く伝わるでしょう。
執筆者:
杉浦 菜々子
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楽譜
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