南 聡 : ピアノのための《甘き春の残痕》(ピアノソナタ第3番) Op.30
Minami, Satoshi : Vestigial Wreckage of “Veri Dulcis”/Piano Sonata 3 Op.30
作品概要
作曲年:1995年
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:16分00秒
※特記事項:CD 出版 fontec FOCD2554「ジグザグバッハ・南聡作品集」に収録
解説 (1)
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部
(582 文字)
更新日:2010年1月1日
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執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (582 文字)
中島香の委嘱によって作曲。彼女のリサイタルにて初演され彼女に献呈された。
A「トッカータ」B「アダージオ:主題のない変奏曲」C「ハーモニゼイション」の3つの楽章からなる。いずれの楽章も素材として過去の自作、5人の奏者のための《歌の影より》(1985)の第4曲を素材にしている。この素材の曲は、万葉集の中の一首「ぬばたまの その夜の梅を たわすれて 折らずきにけり 思いしものを」を歌詞にして中世カルミナの「甘き春(Veri Dulcis)」が引用され綴り合わされていた。原曲の《歌の影より》ではこの「甘き春」は明確に聴取できたのに対し、このソナタではよりひそやかなモチーフとなった。これがタイトルの由来である。
A楽章では、最初に無音で押さえてソステヌートペダルで保持される音型が「甘き春」の同音反復を省略したものである。出版譜では2番目の音がHisになっているがAisの間違いである。この楽章では徐々に背後に残響として香のように「甘き春」が立ち上る仕掛けになっている。B楽章は原曲前半部分の4つの変奏とコーダ。「甘き春」は和音として65小節目より引き延ばされる。C楽章は単純な和音列だが、完全協和音からクラスターまでの変化が尺八の清濁の変化を輪切りにしたようなイメージの音楽。全16分程度。出版譜にミスが多いので正誤表が付いていない場合は問い合わせることが望ましい。
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