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松下 真一 :ピアノのための三楽章《可測な時間と位相的時間》

Matsushita, Shinichi:“Les temps mesurable et topologique” pour piano

作品概要

作曲年:1959年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:★ 種々の作品 ★

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (744文字)

更新日:2018年3月12日
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一台のピアノを通して「音楽時間」という大きな課題へ挑戦しようとしたこの作品は、テーマ自体が根源的な問いを含みもっている。《ピアノのための三楽章――可測な時間と位相的時間》は、数学者・物理学者でもあった松下眞一ならではの作品ともいえよう。松下は「音楽時間」にかんして、「可測」と「位相」という二つの概念を用いて自作品に投影させた。可測な時間を「ラジカルな生命感が強調されている」ものとし、位相的な時間を「在来のビートの観念に支配されない」ものとして捉え、この作曲作品を成立させたのである。  初稿は1957年に完成したが、2年後に改訂がなされた。そして1960年には、作曲者の手でさらに加筆されている。  初演は1959年3月、大阪において横井和子が行った。《ピアノのための三楽章》は横井に献呈されている。曲の最後には「ヨ・コ・イ」の文字が五線譜上の音符で描かれており、作曲者のユーモアが垣間見られる。文字を音符で表すことに関して、松下は、発想の点で近似した「音名象徴」を念頭に置いていた。B、A、C、Hなどのアルファベットを各音名に置き換えて用いる「音名象徴」は、従来様々な作曲家が試みてきた手法であるが、松下は特にベルクの「音名象徴」を想定していた。ベルクは人名の綴りを音名に変換し、リズムや強弱、あるいは音色などでそれぞれの性格まで音楽的に描写しようと考えた。数字やアルファベットをベルクはしばしば象徴的に用いている。松下の《ピアノのための三楽章》では、こうした「音名象徴」に対し、人名の綴りの形状をかたどり音符化する「音形象徴」というべき手法がとられた。  楽譜は1962年(Contemporary music of Japan)と1967年に、いずれも音楽之友社より出版された。

執筆者: 仲辻 真帆
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