平吉 毅州 :ハバネラ
Hirayosi, Takekuni:Habanera
解説 : 長井 進之介 (435文字)
《ハバネラ》と題されているものの、この曲においては、ハバネラ本来の舞踏としての機能 や、多くの作曲家が書いたハバネラ作品に漂う “けだるさ” や色気といった性格は弱められて いる。ハバネラはあくまでもリズムの要素として利用されているのみで、低音部で静かにその存在を誇示し続けていく。“鼓動” のように響くハバネラのリズムは、やはりこの楽曲においては重要な要素であり、繰り返されるリズムパターンに、調性音楽と無調の響きが次々移り変わっていく和声や息の長い旋律が重なり合っていくことで、心の機微が繊細に描かれていく作品となっている。語り掛けるような、また何かを回想しているかのような、感傷的な開始が印象的で、それが少しずつ音数を増やしながら盛り上がりを見せていく。高音のパッセージも効果的に使用され、徐々に希望を感じさせるクライマックスへと向かう。音域の広さも特徴的で、そこに対位法が巧みに駆使されていくことで管弦楽の響きを感じさせるスケールの大きい作品に仕上がっている。
ハバネラ
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