まずこの曲は、メロディーラインをはっきり出して、内声を控えることが最低条件となります。メロディーラインを明確に出すとき、内声がわりと離れている位置(4度、5度など)の場合、メロディーは比較的出しやすいのですが、内声が、2度、3度、とメロディーラインと近い位置にあるとき、内声を弱めるのはとても大変です。
一般的に、モシュコフスキーのみならず、あらゆる作曲家のピアノ曲のメロディーというのは、右手の4とか5の指が担当することが多いです。ところが4とか5の指というのは5本の指の中では最も弱い指で、普段生活において殆ど使うことのない指ですから、なかなか力が入りにくくなります。左手も同じなのですが、4と5の指をしっかり鍛えることで、多くの演奏が可能になります。
普段から、とにかく、「上の音を意識して出そうとすること」、これがピアノ上達の秘訣の1つです。この曲でも極力メロディーを出して、内声をppで弾いて下さい。
この曲は3部形式ですが、最初のAセクションは、1ー8小節間になり、これが4小節ずつに分かれます。最初の4小節は、更に2小節ずつに分かれています。この2つを比べたとき、恐らく、1ー2小節目のほうが3ー4小節目よりもテンションは高いと思いますので、音量も大きいかも知れません。この辺りを考え、2つのフレーズの違いを付けるようにします。
この2つのフレーズ(1ー4小節間)を考えたときに、1つ目は、2小節目のAの音が一番高い位
置にありますので、ここに向かって進むように方向性を付けます。もっと詳しく説明すると、冒頭の、GABはpで始まり、次のBCDを若干大きく、そしてDGFisADを最も大きくすると良いでしょう。2小節目、3拍目のDはその前のAよりも大きくならないようにします。
4小節目の2分音符Gは前の小節から下行してたどり着きますが、ここであまり音量を落としすぎないようにします。何故なら次のFisが最も音量を落とさなければならなく、Gの音量が小さすぎることでFisとの差が聴けなくなるからです。
5ー8小節間も1ー4小節と同じく進んで良いと思いますが、8小節目は文章で言うと句読点が付けられる部分ですので、ほんの少しだけゆっくり気味に終わっても良いでしょう(この曲は、最後の2小節間以外、8分音符の切れ目が全くありません。常に8分が書かれており、故に前に前に進む性格をもっており、どこかでカデンツ的に一息つくような曲ではありません。あまりルバートをかけ過ぎないようにしましょう)。
Bセクション、9ー10小節間で1つ、11ー12小節間で1つと考え、11ー12小節間を9ー10よりも大きく弾きます。そして、13小節目で一度音量を下げます。13ー16小節間を1つと考え、メロディーが上行するに従い、テンションを上げていき、16小節目のGに達します。17ー18小節間を1つと考え、もう一度18小節目のGに向かいます。19ー22小節間、ピークを過ぎましたので、ここから徐々に音量を下げて22小節目まで達します(21小節目のの内声はペダルで濁りやすいので気をつけます)。
以降、再びAに戻り、Codaになります。
この曲は、伴奏と歌と考えてほぼ間違いはありません。表記にもあるように、con motoで進みます。歌の歌詞の内容はわかりませんが、人に物語を話して聞かせるようなアイデアとお考え下さい。