<ロマンス>
この曲は、技術的にさほど難しくありません。曲は横に流れていくタイプの曲ですので、伴奏の部分の8分音符の連符は、音量が大きすぎないように静かに進ませます。つまりバランスの問題で、これが大事な注意点。あとは主に音楽的な注意となります。和声によってのムードを敏感に察知し、ダイナミックや音質等の変化が必要になります。
例えば、2-3小節目と、10-11小節目を比較したとき、10-11のほうが遥かに感情的になっていることがわかります。和音の性格に従い、それなりの表現をしてください。18と19小節目は色が変わります。ソフトペダルを使うなりして、カラーを変えます。
ここでまた、アレンスキーならではの厄介な問題が起こります。20小節目のカデンツの部分ですが、2拍目に注目してください。2拍目の左手はこれもまた、手の届く人がほとんどいないと思われる広い和音です。よって、CBEのEだけは右手で取るようにします。ところが、メロディーラインのAはとても高い位置にあり、Aを押さえたまま、左手のEを弾くことはできません。Aを押さえておかないと、CBEでペダルを変えたとき、Aは切れてしまいます。ここは思い切って、ペダルを伸ばしっぱなしにして、メロディーラインのAを保ってください。CBEの前の和音はFBDですので、明らかに濁りを避けることはできませんが、濁りは一瞬であることと、Aのラインを伸ばすことが重要であることを鑑み、ペダルを踏みっぱなしにしてください。
22小節目以降はBセクションに入ります。一つの音符から2本の棒が出ているのがメロディーラインですので、これだけを出すようにバランスを取ります。
32小節目は30小節目のシークエンスですが、全くムードが異なりますので、ここもカラーを変えてください。
34-36小節は、おとなしいこの曲が最大のドラマを迎えるところです。躊躇せずにFFで弾いてください。
49-50小節は、12-13小節と同じ素材ですが、49-50は、12-13に対してのサプライズの部分です。深刻な12-13とは異なり、優しさや安堵感を得る小節です。それを感じながら演奏してください。
また流れは決してメトロノームのようにならずに、自由に、ルバートを使って演奏します。