スーク :6つの小品 愛の歌 Op.7-1
Suk, Josef:6 Piano Pieces "Song of Love" Op.7-1
解説 : 上田 泰史 (494文字)
ヴァイオリニストとして名高いスークは、出版されなかった作品も含めると生涯に亘り30点余りのピアノ作品を残している。〈愛の歌〉は、10代の後半に書かれた《6つのピアノ小品》作品7(1891-93)の第1曲である。この曲集の第6番(〈カプリチェット〉)がもともと《3つの無言歌》(1891)として書かれたことからも分かるように、この曲集は声楽風のピアノ曲を6曲にまとめて出版するという、メンデルスゾーンが始めた「無言歌」の伝統を受け継いでいる。いっそう直接的な手本は、同郷の大先輩ドヴォルザークの《6つのピアノ小品》作品52にも求められよう。しかしブラームスを受け継ぐヴォルザークに対し、スークの作はヴァーグナー風のクロマティズムやシャブリエ風の都会的で洒脱な色彩感を織り交ぜている。第一番〈愛の歌〉(変ニ長調、アダージョ・ノン・トロッポ・レント)は、ヴァーグナー流の半音階を多用する、甘美で悩ましい主部に始まる。中間部で晴れ晴れとしたヘ長調の楽想が歓喜を謳歌した後、再び主部が回帰する。この時、伴奏音形は動悸のような付点リズムに変化する。そして夢のようなpppの中に〈愛の歌〉は消えて行く。
6つの小品 1. 愛の歌
6つのピアノ曲集 Op.7-1 「愛の歌」