第2楽章 3/4 生き生きと Lebhaft(付点2分音符80)
長いコーダを伴う三部(ABA’)形式。各部分は、ユニゾンによる同一モティーフが合図となって開始する。
A(第1~26小節)
冒頭1~4小節にかけてのユニゾンが躍動的に第2楽章を開始させる。和声を露骨に提示することなく、どこか調子の外れた印象を与える曲調であり、全体としては明るくユーモラスな雰囲気をもっている。ロ音と嬰へ音に調的な重心が置かれているが、ニ音と嬰ニ音が両方ほのめかされることで、ロ調を維持している。
B(第26~68小節)
第26~29小節のユニゾンを区切りとして、Aに比べて不協和な響きが顕著で怪奇的なBが開始する。第44小節から、音域を拡大させてオクターブを基調とするダイナミックな展開を見せ、第54小節では(本楽曲の音楽的物語上の主人公が)ハッと何かに気づいたかのように演出された唐突なffに至る。第56小節からは一気にmpまで弱まり、音楽は変ロ長調を示唆しながらその落ち着きを取り戻そうとする。しかし、第62小節からは再び潜在的な不安感が噴き出していくように音域と音量を拡大させて、音楽的な緊張感を高める。
A’(第69~108小節)
Aが部分的に変化させられながら回帰する。第97小節からは第9~18小節の変形がffで現れ、本楽章中最も高い音域で印象的に挿入される。この新たな挿入句が段階的に音域を下げながら急速に収束し、第105小節からはppに向かってユニゾンで音楽が停滞していく。全体として単一の調性を確立することはないが、部分的にホ長調(第69~70小節、第80~81小節、第95~97小節)、変イ長調(第82~87小節)がほのめかされる。
コーダ(第109~144小節)
各部分を区切るユニゾンのモティーフが分解され、右手と左手によるカノンへと変奏される。コーダ開始時のppから第116小節でffに至るまで一気に音量を増したのも束の間、第117小節以降は、Aで登場した虚しさと退廃的な気分を孕んだ大楽節(第18小節3拍目~第26小節1拍目)が拡張的に変奏される。上行音型による前楽節が何かを訴えるように、徐々に切り詰められながら反復されるが、5度和音による後楽節によってあっさりと閉じられて、中途半端な虚しい印象を与える。第135小節からは再びユニゾンのモティーフが現れて、最終的にはホ音上の長三和音でホ長調を確立して静かに締め括られる。