アレグロ、変ホ長調、8分の6拍子
ソナタ形式で書かれた明るい最終楽章。提示部の第1主題領域は変ホ長調を取り、軽やかな弱音のセクション(第1~14小節)と、16分音符の伴奏による動的な強音のセクション(第14~20小節)から成る。第1主題領域が半終止に行きつくと、第21小節から第2主題領域が属調の変ロ長調で提示される。ここでは、同じ旋律が8分音符と16分音符の伴奏に乗って2回奏される。変ニ長調への突然の転調を挟みつつ(第37小節)、提示部は変ロ長調で閉じられる。
展開部は、この変ロ音を属七和音の第7音としたヘ短調で幕を開ける。16分音符の伴奏に支えられた前半部と、8分音符が主体の後半部から成るが、両部ともゼクエンツの多用によって目まぐるしく転調を重ねる。
再現部(第86小節)では、提示部の両領域とも主調で回帰する。提示部で変ロ長調の第2主題領域において変ニ長調へ逸脱したように、再現部でも第2主題領域の同じ個所で、変ホ長調から変ト長調へと逸脱する。ここで見られる、提示部においても再現部においても三度調へと転じる手法は、3つの調で3つの主題を提示するシューベルトの後年のソナタ形式への萌芽と解釈できよう。