シューベルト :ピアノ・ソナタ 第1番 第1楽章 D 157,154

Schubert, Franz:Sonate für Klavier Nr.1  Mov.1 Allegro ma non troppo

作品概要

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:5分30秒
  • クリックして画像を開く
  • tab
32085 1

解説 (1)

解説 : 髙松 佑介 (682文字)

更新日:2019年4月28日
[開く]

アレグロ・マ・ノン・トロッポ、ホ長調、2分の2拍子

第1楽章の断章であるD 154は、アレグロの4分の4拍子で書かれている。概説で述べたように、第2主題と展開部はD 157と共通する素材を持つものの、D 154がD 157と最も異なるのは提示部の調構造の曖昧さである。冒頭で第1主題がホ長調で提示された後、第2主題が第30小節で現れる。この新たな主題は主調のまま提示され、ロ長調に転じて繰り返されるが(第37小節)、突然ホ長調に引き戻されたり(第56小節)、ロ短調(第59小節)やト長調(第64小節)を経てハ長調(第67小節)へ転じたりと、属調領域は安定しない。属調であるロ長調が確定されるのは、第2主題がドルチェで再び提示される、提示部末である(第73小節)。このようにD 154では、第2主題が主調で提示されてから属調へと移っていくことにより、提示部全体の調構造は見通しにくくなっている。

D 157の提示部でも、遠隔調への転調が積極的に行われる。提示部では、両主題の間に移行部が置かれ、第2主題の属調を準備するのが定石だが、ここでは第2主題の導入が摸続進行と総休止によって無理に行われている。第2主題領域においても、ロ短調からト長調、ハ長調へと転調し、音程を単にずらすことによってロ長調へと戻る点には垢抜けなさが拭えない。だが、音域が広くユニゾンの多い第1主題がホ長調で、そしてホモフォニックな第2主題がロ長調で明確に提示される点では、D 154と比べて調構造が明確になっている。この点に鑑みれば、D 154はD 157の作曲途中の状態を示すものと捉えられよう。

執筆者: 髙松 佑介

楽譜 (0件)