アレグロ・ジュスト、ロ長調、8分の3拍子
本楽章は、2つの主題領域が五度離れて提示され、両者とも主調で回帰するため、大枠では展開部のないソナタ形式とも捉えられる。だが実際には、第1主題領域の内部が三部形式となっているため、ソナタ形式というより緩徐楽章の形式に近いABA’B’と解釈するのが妥当だろう。
A部は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第15番の第4楽章のような四分音符+八分音符が基調となったロ長調の部分に、スタッカートによる軽いニ長調の中間部が挟まれている。
B部は嬰へ長調で始まり、ドルチェで柔らかく奏される(第51小節)。嬰ヘ短調の部分が挿入されたり(第67小節)、長短調が急に転換されたり(第81小節)など、後年のシューベルトに典型的な特徴も垣間見える。軽やかな主題がト長調で提示された後(第133小節)、移行部を経て(第173小節)、A部の主調回帰となる(A’部・第195小節)。
A’部をホ長調で終止させることにより、続くB’部は主調であるロ長調で回帰する(第255小節)。長短調のせめぎ合いにより暗雲が立ち込める中、フォルティッシモのロ長調の三和音で幕を閉じる。