シューベルト :ピアノ・ソナタ 第21番 第2楽章 D 960

Schubert, Franz:Sonate für Klavier Nr.21  Mov.2 Andante sostenuto

作品概要

楽曲ID:32027
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:8分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
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解説 (1)

解説 : 髙松 佑介 (694文字)

更新日:2019年4月28日
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アンダンテ・ソステヌート、嬰ハ短調、4分の3拍子

大枠ではABA’という三部形式を取る。A部の主題は嬰ハ短調で始まり、ホ長調へ転調する。主題の反復時(第18小節)には、ホ長調で始まって嬰ハ短調を目指す。B部の主題は、低音域のため温かい響きのするイ長調で始まる。伴奏に十六分音符のリズムを取ることで、静的なA部とコントラストをなす。主題の反復時(第51小節)には伴奏形が変化し、内声として十六分音符の三連音が追加される。第59小節ではB部冒頭の音形が回帰し、ホ長調からニ長調や変ロ長調を経てイ長調に戻り、B部冒頭の主題が再び提示される(第68小節)。このB主題の再現は3小節目で急に短調で進行し、クライマックスを形成する(第72小節)。第76小節では内声に三連音を取るテクスチュアが回帰し、主調での再現部に向けて転調を行う。

第90小節から冒頭主題が主調で回帰し、主部の再現となる。このA’部は、第3拍に低声が追加されている点で、変奏再現となっている。この再現部を冒頭部から更に差別化しているのは、主題が半終止した後、突然ハ長調に転じる瞬間である(第103小節)。調号の付いた短調が基調をなしていた本楽章において、調号のない長調は、天上的な響きとして現前する。この響きの特異性は、譜面上のハ長調の内実が嬰ロ長調(His-Dur)であることに起因する。五度圏を突き抜け、 さらに先へと昇天しているのだ。さらにホ長調(内実はDisis-Dur)へと進行し、結尾部では嬰ハ長調(内実はHisis-Dur)へと至る。このように、A’部がA部とは全く別物になるよう、本楽章では調構造が考え尽くされている。

執筆者: 髙松 佑介

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