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ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第3番 第1楽章 Op.2-3

Beethoven, Ludwig van : Sonate für Klavier Nr.3 1.Satz Allegro con brio

作品概要

楽曲ID:30690
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:10分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
ピティナ・コンペ課題曲2025:F級

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4 発展5 展開1 展開2 展開3

楽譜情報:3件
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解説 (2)

解説 : 岡田 安樹浩 (875 文字)

更新日:2019年1月20日
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(第1楽章)ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式

[提示部]

3度の重音によるトリル風の音型をもつ主要主題で開始される。主題の後半ではスフォルツァンド(sf)記号によって第2拍目にアクセントが移される。バス声部で主題の確保、分散和音による推移を経て、副次主題がまずト短調であらわれる。続いてト長調でもう1つの副次主題が提示される(注)。この2つの副次主題は、ボン時代に作曲した《ピアノ三重奏曲》WoO.36-3からの転用である。

推移部の楽想や主要主題のトリル風の動機の発展、オクターヴ奏でのシンコペーション動機を経て属調でコデッタは終止する。

[展開部+再現部]

まずトリル風の動機が反復され、次に分散和音の音型が繰り返されてニ長調へ転調する。この分散和音はおそらく推移部の動機を発展させているのであろうが、あまりうまい関連づけとはいえない。主要主題とスフォルツァンドによるシンコペーション動機を組み合わされて展開する。

属和音上にトリル風の動機が繰り返されて再現部を導く。確保に当たる部分は変形されており(第147小節~)、コデッタにおけるシンコペーション動機とスフォルツァンド記号によるシンコペーションの強調は全て提示部における素材に由来しているが、なんともぎこちない。副次主題はともにハ短調/長調で再現されるが、コーダは拡大されている。

[コーダ]

まず変イ長調(同主短調のVI度調)へ、ドミナント和音から偽終止進行で転調すると、これまでの動機とは関連の無い分散和音が繰り返され、ハ長調のドミナント(I度の第2転回形)へ回帰するが、これもカデンツァ風の楽句によって引き伸ばされる。この和音上にこうした楽句が挿入されるのは、再現部の直前やコーダの直前に習慣的に演奏されるカデンツァ、またはアインガングを実際に記譜したものとも考えられよう。

後年ベートーヴェンが自作の協奏曲のカデンツァを全て書き残したことを考えれば、この楽句はこうした文脈でとらえるのが妥当であろう。

このカデンツァ風楽句の後に主要主題がもう1度あらわれ、提示部のコーダと同様に楽章をしめくくっている。

執筆者: 岡田 安樹浩

演奏のヒント : 大井 和郎 (646 文字)

更新日:2019年12月5日
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ベートーヴェンがハイドンに捧げた3つのソナタは作品2です。彼の作品1は何かというと、ピアノトリオです。最初の2つのソナタの第1楽章は、このソナタの1楽章に比べると音数も少なく、層も薄い感じがします。このソナタの1楽章は前の2つのソナタに比べ、あきらかに大きな編成になっています。このソナタにはもちろん、弦楽四重奏の背景は充分にありますし、ベートーヴェンは常にそれを忘れていません。しかし弦楽四重奏だけではこのソナタはいささか不十分です。

ところで彼の最初の交響曲は、このソナタの5年も後になって完成されています。これらの事実から想像すると、このソナタを書いているとき、彼の頭の中は交響曲ではなく、ピアノトリオがあったのではないかという結論に至りました。このソナタの楽譜を見たときに、弦楽四重奏またはピアノトリオとして考えるととても納得が行きます。

例えば、冒頭12小節間は弦楽四重奏、13小節目から26小節間はピアノトリオと言った具合です。

比較的編成の大きな場所はピアノトリオに置き換えて考えると良いでしょう。

ところでこのソナタは、コンクールなどではとてもリスキーなソナタです。最初の4小節の3度が技術的に難しく、中には左手を使って3度を弾く人もいるくらいです。3小節目、32と41の指使いが良いとされていますが、筆者は31と42のほうが楽です。まずここが第1の難所。

次に、78小節目から出てくる左手のトリルです。右手と一緒なので誤魔化しやすい場所でもありますが、ここはきちんと練習をしましょう。

執筆者: 大井 和郎

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