このソナタは、ハイドンに捧げています。ハイドンの音楽を意識して作っています。ハイドンの音楽はとても楽天的で、弦楽四重奏やオーケストラのような器楽が背景にあり、ユーモアたっぷりの音楽ですね。まずこの辺りから理解を始めます。このソナタが弾ける学習者は、中学生以上と想像した上で話を進めますので、指導者の方というよりは学習者の方がご自分でこれを読み、参考にして頂ければ幸いです。
冒頭4小節、プロのピアニストでもたまにあるケースですが、1小節目と3小節目、のめり込み、ここだけテンポが速くなってしまいます。理由は2拍目表拍の8分休符を数えないからです。8分休符ですから音は鳴らしませんが、休符を感じ取り、2拍目の表拍を感じることで正確なリズムで進ませることが出来るはずです。このパターン、先にも何度も出てきますので気をつけてください。
8小節目2拍目裏拍より、12小節目までのステートメント、これがこの曲の大事な部分であるのですが、アイデアとしては「威厳のある発言」とでも理解して下さい。11ー12小節間、メロディーラインの、E-D-Cisは1つの意見や感想であるとするのであれば、12小節目1拍目裏拍より、バスが出てきて、同じメロディーを13小節目で繰り返します。先ほどのE-D-Cisに対する自分の意見を述べているところで、11小節目に対する男性の受け答えです。そうするとまた女性が15小節目のソプラノで同じメロディーを繰り返しますね。言い合い、会話、と理解します。そして2人とも仲良くなるのが17ー20小節間です。
この次は、男性が22小節目からステートメントを述べ始めます。そして25小節目の E-D-Cisは、今度は女性が27小節目で受け答えし、29小節目で再び男性が受け答えをしますね。ここから先(32小節目以降)は、早口で話す会話と解釈しても良いと思います。
11ー18小節間等、滑らかに横に進む書法は間違い無く弦楽四重奏を意識しています。学習者の方は、弦楽器を想像し、アタックをなくし、縦割りではなく、横にスムーズに進むように心がけてください。
58小節目以降、ドラマを意識し、78小節目のゴールにたどり着くのですが、その間テンションを緩めず方向性を持って進んで下さい。
84小節目、機嫌の良い描写です。ここから展開部までとにかく明るく楽しく進んで下さい。
展開部は説明をする必要もないと思いますが、和音によって、同じステートメントでも表情を異ならせて下さい。
181ー189小節間、3人の人達が他人の話が終わる前に自分の話を始めてしまい、言い争いになっています。190ー192はなだめ役の人が落ち着かせています。しかし再び、193ー194小節間、今度は少し短いですが、言い争いが始まり、195ー197、なだめ役の人、198ー199小節間、再び言い争い、200ー202再びなだめ役、そして次第にみんな落ち着いてきます。そのようなイメージを持ちます。言い争いと言っても決して深刻ではない、コメディーのような世界と考えます。