ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第2番 第1楽章 Op.2-2
Beethoven, Ludwig van : Sonate für Klavier Nr.2 1.Satz Allegro vivace Op.2-2
作品概要
解説 (2)
解説 : 岡田 安樹浩
(526 文字)
更新日:2019年1月15日
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解説 : 岡田 安樹浩 (526 文字)
第1楽章 イ長調 4分の2拍子 ソナタ形式
(提示部)
主要主題は、3オクターヴのユニゾンによる跳躍下行と順次上行という対照的な動機からなり、確保(第21小節~)を経て即興的な推移(第32小節~)となる。
副次主題(第59小節~)は属短調のホ短調であらわれ、短3度ずつ上昇しながら繰り返される。属調のホ長調による楽想(第84小節~)を挿み、先にあらわれた即興的な推移が再現してコーダとなる。
(展開部+再現部)
提示部をホ長調で締めくくった後、ホ(単音)→ホ+ト+ロ(三和音)→ホ+ト(3度重音)という進行が挿入され、展開部(第123小節~)を開始するハ長調(イ長調の同主短調の3度調)を導く。
まず、主要主題の跳躍下行動機を用いて、ハ長調、変イ長調、ヘ短調と転調を繰り返し、ふたたびハ長調へ戻ると、今度は順次上行動機がヘ長調であらわれる。二短調、ト短調、ヘ長調と転調を繰り返しながら順次上行動機が展開され、主調の同主短調であるイ短調へ転じると、ドミナントがながく引き延ばされて再現部を準備する。
再現部(第226小節~)は古典的ソナタ形式の規範に則り、副次主題(第279小節~)を主調(の同主短調)で再現し、提示部と同様の推移とコーダを主調へ移置して楽章を閉じる。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1257 文字)
更新日:2019年12月5日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1257 文字)
このソナタは、ハイドンに捧げています。ハイドンの音楽を意識して作っています。ハイドンの音楽はとても楽天的で、弦楽四重奏やオーケストラのような器楽が背景にあり、ユーモアたっぷりの音楽ですね。まずこの辺りから理解を始めます。このソナタが弾ける学習者は、中学生以上と想像した上で話を進めますので、指導者の方というよりは学習者の方がご自分でこれを読み、参考にして頂ければ幸いです。
冒頭4小節、プロのピアニストでもたまにあるケースですが、1小節目と3小節目、のめり込み、ここだけテンポが速くなってしまいます。理由は2拍目表拍の8分休符を数えないからです。8分休符ですから音は鳴らしませんが、休符を感じ取り、2拍目の表拍を感じることで正確なリズムで進ませることが出来るはずです。このパターン、先にも何度も出てきますので気をつけてください。
8小節目2拍目裏拍より、12小節目までのステートメント、これがこの曲の大事な部分であるのですが、アイデアとしては「威厳のある発言」とでも理解して下さい。11ー12小節間、メロディーラインの、E-D-Cisは1つの意見や感想であるとするのであれば、12小節目1拍目裏拍より、バスが出てきて、同じメロディーを13小節目で繰り返します。先ほどのE-D-Cisに対する自分の意見を述べているところで、11小節目に対する男性の受け答えです。そうするとまた女性が15小節目のソプラノで同じメロディーを繰り返しますね。言い合い、会話、と理解します。そして2人とも仲良くなるのが17ー20小節間です。
この次は、男性が22小節目からステートメントを述べ始めます。そして25小節目の E-D-Cisは、今度は女性が27小節目で受け答えし、29小節目で再び男性が受け答えをしますね。ここから先(32小節目以降)は、早口で話す会話と解釈しても良いと思います。
11ー18小節間等、滑らかに横に進む書法は間違い無く弦楽四重奏を意識しています。学習者の方は、弦楽器を想像し、アタックをなくし、縦割りではなく、横にスムーズに進むように心がけてください。
58小節目以降、ドラマを意識し、78小節目のゴールにたどり着くのですが、その間テンションを緩めず方向性を持って進んで下さい。
84小節目、機嫌の良い描写です。ここから展開部までとにかく明るく楽しく進んで下さい。
展開部は説明をする必要もないと思いますが、和音によって、同じステートメントでも表情を異ならせて下さい。
181ー189小節間、3人の人達が他人の話が終わる前に自分の話を始めてしまい、言い争いになっています。190ー192はなだめ役の人が落ち着かせています。しかし再び、193ー194小節間、今度は少し短いですが、言い争いが始まり、195ー197、なだめ役の人、198ー199小節間、再び言い争い、200ー202再びなだめ役、そして次第にみんな落ち着いてきます。そのようなイメージを持ちます。言い争いと言っても決して深刻ではない、コメディーのような世界と考えます。