第5番 ホ短調
このハンガリー狂詩曲は、19曲中比較的技術面では難易度はそれほど高くない曲です。曲は悲しみに満ちあふれたメロディーが何度も繰り返されます。またこの曲は現実と幻想が交互に脳裏に蘇ります。曲は大きく分けて3つのセクションで構成されています。1 悲しみの歌 2 2つめの悲しみの歌 3 愛と希望 としておきます。これは単なる比喩の一例に過ぎませんのでその旨ご理解下さい。
冒頭から8小節目までは、悲しみの歌が始まり、この曲の主題となります。2小節目の2拍目までが一区切りですので、2拍目裏拍の16分音符は新しいものといて扱います。故に、ペダルは一度そこで離してしまい、サイレントを入れます。4小節目の2拍目裏拍も同様です。2小節目の3拍目を見ると、上行系の16分音符があります。2小節目、メロディーラインはCに達します。4小節目、メロディーラインはDに達します。5小節目、メロディーラインは4拍目裏拍でEに達し、6小節目1拍目表拍でFに達します。Fに達した後は徐々に下行しますので、この6小節目がピークポイントと考えます。
9小節目から16小節目までの8小節間、1小節目から8小節目までのメロディーの変奏となります。
ただし、左手の伴奏形を見ますと、1拍目と3拍目の表拍に音符が無く、代わりに16分休符がありますね。これは少しAgitato気味になる感情表現です。テンポは若干速くても良いのではないかと思います。
17小節目、G-durで2つめの悲しい歌が始まります。Durは楽しいと単純に思ってはいけません。
例えば、シューマンの幻想曲の第1楽章もdurですが、悲しみの表現です。この部分も同じです。
しかしながら1つめの悲しみの歌よりもより幻想的です。そして夢うつつの部分でもあります。このセクションが現実に引き戻されるのが、24-25小節間です。カデンツを終え、再び1つめの悲しみの歌に27小節目で戻ります。
34小節目3拍目までは1-8小節間と全く同じですが、34小節目4拍目より、変奏の種類が新たになります。非常に感情表現が強い部分です。
42小節目、再び2つめの悲しい歌になりますが、今度はE-durで、それと例えば44小節目2拍目に出てくるDの音など、少し雰囲気が異なります。46小節目にいたり、メロディーラインはオクターブになりますが、それも束の間再び50小節目で現実に引き戻されるかに思われます。しかしながら、51小節目からは、希望と愛に満ちた歌が始まります。
この51小節目から73小節目までが、この曲中で唯一、希望や愛、または過去の素晴らしい記憶が蘇る部分です。そして77小節目に至り、再び1つめの悲しい歌に戻り終わります。
70小節目、1拍目の左手和音は手がなかなか届かないと思います。一番上のCisのみ、右手で弾くと良いでしょう。
82小節目、右手の和音はf-mollの和音で、とてもショッキングな和音です。本来はF-durの和音が来るべきで、これがこのe-mollのナポリの6になっていました。82小節目だけはそれがありません。