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リスト : 巡礼の年 第2年「イタリア」 「物思いに沈む人」 S.161/R.10-2 A55

Liszt, Franz : Années de pèlerinage deuxieme année "Italie" "Il pensieroso" S.161/R.10-2

作品概要

楽曲ID:23725
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:6分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

解説 : 伊藤 萌子 (314 文字)

更新日:2019年1月9日
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同じくルネサンスの三大巨匠の一人、彫刻家ミケランジェロによって刻まれたフィレンツェにあるロレンツォ・デ・メディチの墓の彫像よりインスピレーションを受けている。(彫像はミケランジェロの擁護者であったロレンツォ・デ・メディチ、ジュリアーノ・デ・メディチの二人を表す。その二人を対照的に扱い、内省的なロレンツォの坐像の下には「朝」「夕」、外交的なジュリアーノには「昼」「夜」の裸体像が置かれている。)

第1番の明るさから一転、重々しく静寂さを帯びた曲調であり、同音反復によってそれが一層強調されている。なお、1866年に "三つの葬送頌歌" 第二曲 [夜] に拡大編曲されたことからも示されるように、本作品は「死」と関連づけられている。

執筆者: 伊藤 萌子

演奏のヒント : 大井 和郎 (992 文字)

更新日:2018年3月12日
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2. 物思いに沈む人  

筆者はヘンレー版を見ています。ヘンレー版ではこの48小節の曲は2ページに渡って印刷されています。ヘンレー版をお持ちの方は左のページを、そうで無い方は1-22小節間をご覧下さい。

この曲は恐らく後半の方が演奏しやすいと思います。23小節目から最後までは、ダイナミックマーキングが事細かに書いてありますが、左のページ(1-22小節間)では、後半に比べてあまりダイナミックのマーキングは書かれていませんね。1小節目アーフタクトにメゾフォルテが書かれており、以降クレシェンドマーキングやディミヌエンドマーキング、rinforz、スフォルツアンド、しか書かれていません。

前半の難しいところはダイナミックのコントロールです。下手をすると平坦になりがちです。前半22小節間を大きく見たとき、恐らく17小節目辺りが最もテンションの上がるところで、それ以降は半音階で下行していきますね。仮に、14小節目からのメロディー音 B が最も強い音であると仮定した場合、その前のフレーズである、9小節目からのメロディー音Gは、rinforzと書かれてあっても次に来るBを想定し、少し余裕を残します。こうしてみると、1つのフレーズは4小節単位で進行していることが解ると思います。1-4小節間、5-8小節間、ともにメロディー音はEですが、1-4小節間よりも、5-8小節間をよりテンションを高くします。

このように、ピークを迎えるポイントから逆算していくと、ダイナミックの配分が解りやすくなりますね。

さて、音楽的なお話になりますが、この「物思いに沈む人」はどちらかというと、横に流れる音楽と言うよりは縦に割れる音楽かもしれません。イメージとしては「葬送的」とお考え頂き、威厳があり、重々しく、劇的要素も含ませて演奏します。

また、ペダルに関してですが、例えば28小節目には、1小節間踏みっぱなしのペダルまーキングがありますね。これをまともに信じてしまったら大変な事になります。これらのマーキングはあくまで昔のピアノを想定したマーキングで、昔のピアノは現在のピアノのように音は伸びませんし、音の大きさもありません。例えば28小節目を演奏するとき、ペダルはこまめに変え、「何の音が鳴っているのか」はっきり解るような演奏にするべきです。場所によってはペダルが必要ではない場所もあるかもしれません。

執筆者: 大井 和郎
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