2. 物思いに沈む人
筆者はヘンレー版を見ています。ヘンレー版ではこの48小節の曲は2ページに渡って印刷されています。ヘンレー版をお持ちの方は左のページを、そうで無い方は1-22小節間をご覧下さい。
この曲は恐らく後半の方が演奏しやすいと思います。23小節目から最後までは、ダイナミックマーキングが事細かに書いてありますが、左のページ(1-22小節間)では、後半に比べてあまりダイナミックのマーキングは書かれていませんね。1小節目アーフタクトにメゾフォルテが書かれており、以降クレシェンドマーキングやディミヌエンドマーキング、rinforz、スフォルツアンド、しか書かれていません。
前半の難しいところはダイナミックのコントロールです。下手をすると平坦になりがちです。前半22小節間を大きく見たとき、恐らく17小節目辺りが最もテンションの上がるところで、それ以降は半音階で下行していきますね。仮に、14小節目からのメロディー音 B が最も強い音であると仮定した場合、その前のフレーズである、9小節目からのメロディー音Gは、rinforzと書かれてあっても次に来るBを想定し、少し余裕を残します。こうしてみると、1つのフレーズは4小節単位で進行していることが解ると思います。1-4小節間、5-8小節間、ともにメロディー音はEですが、1-4小節間よりも、5-8小節間をよりテンションを高くします。
このように、ピークを迎えるポイントから逆算していくと、ダイナミックの配分が解りやすくなりますね。
さて、音楽的なお話になりますが、この「物思いに沈む人」はどちらかというと、横に流れる音楽と言うよりは縦に割れる音楽かもしれません。イメージとしては「葬送的」とお考え頂き、威厳があり、重々しく、劇的要素も含ませて演奏します。
また、ペダルに関してですが、例えば28小節目には、1小節間踏みっぱなしのペダルまーキングがありますね。これをまともに信じてしまったら大変な事になります。これらのマーキングはあくまで昔のピアノを想定したマーキングで、昔のピアノは現在のピアノのように音は伸びませんし、音の大きさもありません。例えば28小節目を演奏するとき、ペダルはこまめに変え、「何の音が鳴っているのか」はっきり解るような演奏にするべきです。場所によってはペダルが必要ではない場所もあるかもしれません。