リスト : 巡礼の年 第2年「イタリア」 「婚礼」 S.161/R.10-1 A55
Liszt, Franz : Années de pèlerinage deuxieme année "Italie" "Sposalizio" S.161/R.10-1
作品概要
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:7分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
解説 : 伊藤 萌子
(95 文字)
更新日:2019年1月9日
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解説 : 伊藤 萌子 (95 文字)
ルネサンスの三大巨匠の一人、画家ラファエロによる、聖母マリアと聖ヨゼフの婚礼の場面を描いた『マリアの婚礼』にインスピレーションを受けて作曲された宗教的な作品で、明るく清澄な響きを特徴とする。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1402 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1402 文字)
1. 婚礼
まず最初に覚えておく大切なことが1つあります。この曲中に書かれいる全ての休符は、実際のサイレントではなく、ジェスチャー的、あるいは余韻を残すための休符であるとお考え下さい。この曲は多くの箇所で余韻を残さなければなりません。余韻は冒頭3-4小節間から始まります。ディミヌエンドマーキングがありますね。3小節目も4小節目も1拍目の裏拍に少しアクセントを付け、後は消えていきます。特に4小節目はカデンツと考えます。この4小節間、考え方としては1-2小節間が主となる歌のライン、3-4小節間はその歌に対する伴奏と考えても構いませんし、もう1人の歌手の「応え」と考えても構いません。
1-2小節間のような旋律は、5-6小節間、10小節目、12小節目と頻繁に出てきます。このメロディーラインは同じ音価が(この場合4分音符)並びますので、ここは機械的にならないように注意します。それにはルバートを多く使い、テンポを揺らすことが秘訣です。
1-8小節間はカデンツと考え、曲がスタートするのは9小節目と考えます。9小節目、11小節目、13小節目、15小節目、17小節目と次々に和音が入れ替わります。奏者はそれぞれの和音の響きに感じた感情を入れ、平坦にならないようにします。例えば15小節目は音色ががらりと変わるショッキングな部分です。音量を落とし、ソフトペダルを踏んでも良いと思います。この一連の和音の変化である9-18小節間、強弱関係の指示はありません。クレシェンドがスタートするのは19小節目からになるのですが、かといって9-18小節間の音量を全く変えないというのもおかしな事になります。ppp-pの範囲内で微妙に変化を試みて下さい。
19小節目からは最初のクライマックスである27-29小節間に達するように徐々に音量を上げていきます。
30-37小節間は再びカデンツと考えます。
38小節目からは新たな旋律が登場します。実に厳かに、宗教的に、和声の変化に注意します。このセクションも大きな強弱の変化はありません。基本的にはp-pppの範囲内で強弱を付けます。ピークを迎える小節は2つあり、43小節目と57小節目になります。68小節目から、やっとクレシェンドがかけられ、同時にstringendoもかけ、74小節目にffで達します。75-77小節間、すぐに音量を落とし、77小節目からppで始まり、クレシェンドをかけ、最終的には111-112小節間のカデンツに到達するのですが、もって行き方が重要です。例えば92小節目にはフォルテシモがありますが、ここから先の道のりは遠いです。ここでフォルテの限りを出してしまっては後が収集つかなくなります。フォルテを抑え後のために温存しましょう。
112小節目のフェルマータは個人的には余韻を残すのでは無く、サイレントととして時間を取ると解釈しています。113小節目からはritenuto il tempoとあり、少しゆっくり気味に進みます。120小節目の右手の8分音符は、レゾネンスです。決して急がず、ゆっくりとppで降りてきましょう。
この手の曲はとにかくフォルテシモの影響によって固くなりがちです。どんなにフォルテの時でも基本的なシェーピング(フレージング)を忘れないようにすると良いです。また、右手の和音は1の指の力を抜くときれいなフォルテを出すことができます。
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