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リスト :巡礼の年 第1年「スイス」 「ワレンシュタットの湖で」 S.160/R.10-2 A159

Liszt, Franz:Années de pèlerinage première année "Suisse" "Au lac de Wallenstadt" S.160/R.10-2

作品概要

楽曲ID:23716
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:3分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1261文字)

更新日:2018年3月12日
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2.「ワレンシュタットの湖で」

この曲の技術はそれほど大変ではありませんが、強靭な左手が必要になります。もちろんフォルテを出すための強靭さではなく、pppにしても音が抜けない強靭さが必要という意味です。リストは冒頭から、pp dolcissimo と書いています。これら左手の伴奏形は全てpppで弾かなければなりません。また、表示記号はAndante ですので、ゆっくりと進みます。ヘンレー版には、5小節目より、左手の指番号が1ー1と始めるように提案されていますが、必ずしも守る必要はありません。筆者がこれを演奏する時は、1231513を使います。色々試してみて下さい。

さてこの左手ですが、セクション毎に左手には必ず2種類の伴奏形が来ます。5-8小節間、左手はDes C B Es As Es B と C B As Es As Es As の2種類です。他のセクションでも同じです。この2つの伴奏形はDesから始まるグループが(この場合5-6小節間)、Cから始まるグループで(7-8小節間)解決すると考えるとします。その時、テンションが高いのはどちらかというとDesから始まるグループです。他のセクションでもこのペアを比較して、どちらの方がよりテンションが高く、どちらが低くという差を少しだけつけることにより、メロディーラインをサポートできます。ただし、左手は基本的にpppですし、常にdolceですので、極端な差はつけません。

ちなみに、Des C B Es As Es B を弾くとき、最も重要な音は最初のDesです。何故ならこの音はこの和音の第7音であり(Es G B Des)、最も響かせたい音ではあるのですが、最初のDesは1拍目表拍のみにあり、必ず右手の旋律とぶつかることになっています。メロディーラインを消してしまってもまずいのですが、だからと言ってこのDesを消してしまうのもまずいです。さじ加減を考えてみてください。このDesは、次のグループのCが解決音となると考えます。

また、別の考え方として、メロディーだけを見るという方法もあります。1つのフレーズは、5-12小節間で、この7小節間はさらに2つに分けることができます。その1つは8小節目1拍目のCで終わり、2つ目は12小節目、3拍目のAsで終わります。これら2つの音には決してアクセントをつけてはいけません。1つ目のメロディーラインで最も高い位置にあるのは、7小節目のAsですね。さてここをピークと感じるか、あるいは先ほどの和音の性格に従い、7小節目を解決和音と考え、6小節目のFをピークと感じるか、は奏者の自由です。どちらでも感じる方で演奏してみてください。

この曲で怖いのは、バランスの問題、メロディーラインがオクターブになったとき硬くなること、左手が抜けてしまうこと、などです。そしてこの曲は途中で指示がない限りは絶対に止まったりテンポを緩めたりしてはなりません。テンポは1つで、あたかも湖畔の水面の動きが止まらないよう、常に前へ前へ進んでください。

執筆者: 大井 和郎

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