第8番 Op.27-2 Des-Dur このノクターンの左手の伴奏形をまず見ていただきたいです。ただの1小節として、16分音符の伴奏形がなくなっているところはありません。一貫して最後まで16分音符の伴奏形は続きます。つまり、流れを止めない事が重要になってきます。ところが右手を見ると、わざわざその流れを止めることが目的のように実に数多くの音符が全体にわたって書かれています。この曲の演奏のヒントとしては、右手のパッセージをスムーズに弾き、左手の流れをできる限り止めないようにする事に尽きます。 しかし誤解していただきたくないのは、だからといってin tempoで淡々と進むのではなく、時間を取るべきところは取り、細かい音符のパッセージを無理なく、速すぎず、機械的にならないように演奏し、かつ左手がある1音だけ長く伸びたり、止まったりしないように心がけます。従ってルバートは必須であり、基本的な流れの中でテンポの自由な調整が必要になります。例えば、20小節目の2拍目、右手に32分音符がオクターブで入ってきます。これをオンタイムで弾いてしまえば、とても機械的になりますし、堅く聞こえてしまいます。またこの部分だけ音量が大きくなります。ストレスがかかるのは1拍目のBes と As であり、2拍目は衰退していく様子を描写しなければなりません。そのためには少しだけ2拍目で時間を取らないことには、32分音符をスムーズに弾くのは不可能に等しいです。 このような箇所が随所に見られますね。奏者は臨機応変にそのようなパッセージに対応し、自然に音楽が流れるように心がけてください。とはいえ、中には技術的に困難なパッセージもあります。例えば32小節目の2拍目の右手です。ついつい、オンタイムで弾かないとという呪縛があると、このようなパッセージは雑になりがちです。しっかりと部分練習をするのですが、例えばこのケースの場合、3連符を一つ一つ練習するよりも、3連符の1つ前の音から3つ抜粋して練習をする方が遙かに効果的です。つまりは、指番号125を練習するようにします。 このように、オクターブ以上離れている広い跳躍のパッセージを練習する際は、軸となる真ん中の音を決めます。この場合は3つしかありませんので、当然2の指が担当する真ん中の音が軸音になります。As Es C で試してみましょう。 1 Es に2の指を置きっ放しにします。その状態でAsを弾きます。 2 次に同じ状態で今度はCを弾きます。次に、CからAsに戻ります(もちろん2の指はEsに置いたままです)。 3 今度はAsからCへ。この動作を素早くできるように段々と速度を上げていきます。音は、AsC CAs AsC CAs の繰り返しになります。 4 つぎに、As Es C をループさせ、As Es C Es As Es C Es と弾いてみましょう。この動作を行ったとき、困難さを感じなければこのユニットは弾けるようになります。 できたら次に、A E Desを同じように練習します。そして4つのユニット全て練習が終わったら、前半2つ、後半2つに分けて練習します。多くの奏者は、左手と合わせた時、後半の方にトラブルがあります。それは右手が原因ではなく、33小節目で左手が低いDesに飛ぶので、それが心配になり、気持ち的に焦ってしまい右手を間違います。練習の際、33小節目には行かず、32小節目の最後の音で止めて練習をしてみてください。 52小節目のような、長い細かいパッセージを練習する際も、例えば、前半と後半に分けて練習をすると良いでしょう。