Andante con moto 歩く速さで、動きをもって
Cantabile e compiacevole 歌うように、そして楽しそうに気持ちよく
冒頭のコラール風の8小節が、自由に変奏されていく。第9小節目からは弦楽伴奏を伴うソロ歌唱のよう。それが第17小節目からは弦楽三重奏を思わせ、第21小節目l’istesso tempo「1拍の長さを変えずに同じ速さで」以降、器楽的なテクスチュアにほどけていき、第30小節目molto ten. non troppo presto「とてもテヌート(音を充分に保持して)で、速すぎずに」から優雅なカデンツァになる。音が舞い遊んで戻ってきたテーマはさらに豊かな彩色を施されて変容し、命を得たバスが2オクターヴ半もの広範囲を降りていく。曲尾は左右の手が交差し、大切なものを両手でそっと包み込むように終える。