ベートーヴェン :11のバガテル 第11番 Op.119-11 変ロ長調
Beethoven, Ludwig van:11 Bagatellen Nr.11 B-Dur Op.119-11
解説 : 鐵 百合奈 (465文字)
Andante, ma non troppo 歩く速さで、しかしはなはだしくなく
Innocentemente e cantabile 無邪気に、そして歌うように
天使たちの合唱のような、崇高な曲。純真なコラール4小節をリピートした後、第5小節目からの第2部分はヘ長調(属調)に転調し、優しいほのかな香りと、懐かしい心地を感じる。第9~10小節の16分音符は、pからさらにdim.してppになり、祈りが天に昇ってゆく。第11小節目から第3部分となり、molto cantabile(とても歌うように)と念押しのようにカンタービレが再度指示される。この箇所は弦楽的な響きを想像させる(右手の高音はヴァイオリンの泣きそうな切ない音色に似合うだろうし、左手の8分音符の重音もヴィオラとチェロで奏すると温かく優しい空気を醸し出すだろう)。また、この旋律は第7、8番で現れた木霊(こだま)のメロディーの断片の音価を2倍にし、変容させたものである。コーダの4小節間(第19小節目~)は再びコラール風の響きに戻り、慈愛に満ちた静かな終わりを迎える。
[CBJ 2020]ベートーヴェン:11のバガテル 作品119-11