きびきびとしながらもどこかおどけた冒頭の楽想は、1906年5月に作曲され、幼少期の《小歌集》第5集に第6番として所収された〈行進曲〉を元にしている。本曲はそこから新しい副次主題の導入など、大幅な加筆修正が行われており、より成熟した書法が駆使されている。ちなみにプロコフィエフは幼少期に本曲の原曲も含め多数の行進曲を書き残しているのだが、ソ連の音楽学者デリソーンはその根拠を、日露戦争の戦意発揚のために軍楽が盛んに演奏されていたことに求めている。全体に、付点音符と規則正しい二拍子によって行進曲の様式が遵守されているが、急激な転調や不協和音の多用により、プロコフィエフならではのグロテスクな雰囲気が生まれている。
原曲の1906年の行進曲と同じく、獣医学者で幼少期から40年以上交友が続いた親友、ヴァシーリイ・ミトロファーノヴィチ・モロリョーフ(1880〜1949)に献呈された。