パデレフスキ : 6つの演奏会用ユモレスク 第1番 古風なメヌエット Op.14-1
Paderewski, Ignacy Jan : 6 Humoresques de concert No.1 Menuet a l'antique Op.14-1
作品概要
解説 (2)
解説 : 池田 愛美
(113 文字)
更新日:2022年3月3日
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解説 : 池田 愛美 (113 文字)
4分の3拍子、ト長調。3部形式。「古風なメヌエット」とタイトルが付いているとおり、主題はバロック音楽を思わせる、即興的な旋律が特徴的である。旋律にはトリルやターンといった装飾音が多用され、3拍子のリズムが生き生きと表現される。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1203 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1203 文字)
1.古風なメヌエット
とても有名な曲で、好みの賛否が分かれるこの曲ですが、演奏法によっては目の覚めるような名曲にもなります。結果、優れた技術も必要になってきます。この曲に要される最も重要な事柄は、「即興性」です。テンポはかなり自由に動いて然るべきだと考えます。要するにメトロノームのような弾き方は避けます。冒頭8小節目まで、楽しげな歌から始まります。ここから既に即興性が必要になり、気取っている貴族がお洒落な会話をしているような「品」を出し、決して重たくならないように注意します。ここ8小節目までのおしゃべりの内容は何か冗談を交えたコケティッシュな要素もあるかも知れません。9小節目からはまずテンポをゆっくりと動かし徐々にaccelをかけて良いと思います。何かワクワクする楽しいことで落ち着かない様子です。
20小節目以降、そのワクワク感は27小節目を目指して頂点に達します。途中、左手の伴奏の部分が24小節目でオクターブに変わりますが、個人的には、ここから突然大きくするのではなく、20小節目のクレッシェンドが24小節目のオクターブで理に叶うように、自然の流れの中でオクターブに変わるほうが自然であると感じます。故に、24小節目のオクターブはそこまで大きく始まることはなく、むしろ27小節目に向かって大きくしていくほうが流れ的にはスムーズであると感じます。
幸せの絶頂点が28小節目以降です。冒頭1-7小節間と比較すると、7-8小節目の左手の旋律が、34小節目にはとても派手なカデンツとなって現れますね。このように見た時、Aセクションは44小節目までと考えますので、1小節目から44小節目まで、感情は急激に変化し、幸せの絶頂に達するドラマがあります。そのドラマを上手に演出することが重要です=ダイナミックの幅も広く必要になります。
Bセクションは45小節目から始まり、76小節目まで続きます。Bセクションはどちらかというと冷静なセクションです。冷静と言っても決して深刻ではありません。少し現実的になっている程度に留めます。会話は、多くの問題を含めながらも、77小節目に再び戻ってくるAセクションで楽しいことを再び思い出すという感覚です。65小節目以降、右手に長いトリルが出てきますね。決して大きくなりすぎないように。トリルは速度を変 化させても構いません。77小節目にスムーズに、自然に流れ着くように弾いてください。
再びAセクションに戻り、117小節目でCodaとなりますが、CodaにはVivoという指示があります。もちろんこれは必ずしも速くという意味ではなく、「生き生きと」という意味ですが、このCodaに書かれてあるトリルや3連符などの音形を見ると、テンポも速くしたほうが生き生きしてくると思います。
最後はpになっていますが、奏者は和音を弾いた後、手を素早く上にあげ、軽い品の良さを出して終わってください。
楽譜
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