作品概要
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:フーガ
総演奏時間:3分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 朝山 奈津子
(504 文字)
更新日:2008年6月1日
[開く]
執筆者 : 朝山 奈津子 (504 文字)
J. P. ケルナーの弟子が写した手稿譜を唯一の資料として伝えられる。ケルナーはバッハと同時代の人でバッハの作品をコレクションしていたのだが、その弟子の筆写となると、ケルナー自身の作である可能性がひじょうに高くなる。
しかし、全体にはバッハらしい特徴がいくつか見られる。まず、この種の模続進行と同音連打を含む主題は、ヴァイマール時代以前によく用いたタイプである。また、3声の主題提示を一通り終えたのちは、主題提示のあいだに長い自由句が挿入される。これは、バッハの初期のフーガの特徴である。(《平均律クラヴィーア曲集》など中後期の様式では、主題提示はまとまって行なわれ、いわば主題グループを繋ぐように自由な展開部分が現れるようになる。)さらに、楽曲のほぼ中央、第35小節に平行長調へ転じる明確な完全終止がおかれる。フーガのなかに完全終止をおいて、フーガにシンメトリーを与える手法は、バッハが後年に確立する形式であるが、すでにここに萌芽がある。
模続進行や3度の平進行のために単調で陳腐な響きとなってしまった部分は否めないが、半音階や巧みな和声進行も垣間見え、たとえ誰の作であったにせよ味わい深いフーガとなっている。
演奏のヒント : 大井 和郎
(734 文字)
更新日:2023年11月20日
[開く]
演奏のヒント : 大井 和郎 (734 文字)
まず技術的にも難しいフーガなので、テンポを1つ決定し、テンポが遅くなったりしないようにします。そのためには技術的に最も困難な箇所を弾けるテンポを全体のテンポとして辻褄を合わせます。
バッハのe-mollという調は2種類の顔があり、ゆっくりで進むe-mollは深刻で悲しみの表現ですが、速く進むであろうe-mollは実にテンションが高く、このフーガも例外ではありません。
テーマは(主題は)1小節目から始まり、4小節目の1拍目Eまでとします。この波形を見てみると、2小節目の2拍目に最も高い音であるEに達して、そこから徐々に下がってきます。故に、このEに最も音量を与え、下行するに従って徐々に音量を下げていきます。以降、同じマナーで出てくるテーマを処理します。
失敗例としてはテーマがはっきり聴き取れないようなバランスであることもありますので、テーマはとにかくはっきり出し、他の声部の音量を抑えます。
1~4のテーマが終わったら、4小節目2拍目よりアルトのテーマが始まりますのでこちらを聴かせるようにして、8小節目から9小節目3拍目まで下行を続けますのでディミヌエンド、その後急速に上行し、10小節目において、この近辺では最も高い音であるAに達しますのでモルトクレシェンドをかけてAに達し、そのままテンションを上げ続けてから、バスのテーマが11小節目より、フォルテで出るようにします。
これは一例に過ぎませんが、このような流れで、これ以降も、テーマを取り巻く環境に伴い、テーマをはっきりと出し、辻褄を合わせてシークエンスで音量を変えていくようにします。
フーガ自体のテンションはとても高いので、音楽を止めること無く、また、必要以上にテンションを下げること無く、最後まで進んで下さい。