まず技術的にも難しいフーガなので、テンポを1つ決定し、テンポが遅くなったりしないようにします。そのためには技術的に最も困難な箇所を弾けるテンポを全体のテンポとして辻褄を合わせます。
バッハのe-mollという調は2種類の顔があり、ゆっくりで進むe-mollは深刻で悲しみの表現ですが、速く進むであろうe-mollは実にテンションが高く、このフーガも例外ではありません。
テーマは(主題は)1小節目から始まり、4小節目の1拍目Eまでとします。この波形を見てみると、2小節目の2拍目に最も高い音であるEに達して、そこから徐々に下がってきます。故に、このEに最も音量を与え、下行するに従って徐々に音量を下げていきます。以降、同じマナーで出てくるテーマを処理します。
失敗例としてはテーマがはっきり聴き取れないようなバランスであることもありますので、テーマはとにかくはっきり出し、他の声部の音量を抑えます。
1~4のテーマが終わったら、4小節目2拍目よりアルトのテーマが始まりますのでこちらを聴かせるようにして、8小節目から9小節目3拍目まで下行を続けますのでディミヌエンド、その後急速に上行し、10小節目において、この近辺では最も高い音であるAに達しますのでモルトクレシェンドをかけてAに達し、そのままテンションを上げ続けてから、バスのテーマが11小節目より、フォルテで出るようにします。
これは一例に過ぎませんが、このような流れで、これ以降も、テーマを取り巻く環境に伴い、テーマをはっきりと出し、辻褄を合わせてシークエンスで音量を変えていくようにします。
フーガ自体のテンションはとても高いので、音楽を止めること無く、また、必要以上にテンションを下げること無く、最後まで進んで下さい。