テーマ(主題)に60個もの音符があるフーガです。長さは4小節分あります。バッハの書く、B-durは気品があります。途中、半音階的進行が入ってきて、強い表現にもなりますが、品のある、あるいはおしゃれな楽しさをイメージして下さい。このフーガはテーマの部分よりもむしろテーマが来ない部分の処理が難しいかもしれません。
例えば、13~15小節間はテーマがありません。この3小節間はシークエンスと考えて良いと思います。バスはこの時、16分音符で進行しますのでとても解りやすいのですが、問題はソプラノとアルトにあります。
バッハが音価の大きい音符を使って、それらをタイで繋げたとき、とても歌心があるラインになる場合がしばしばあります。この3小節間のソプラノだけ、そしてアルトだけを弾いてみて下さい。そしてそれらを歌の部分とお考え下さい。ソプラノとアルトを合わせ、2重唱と考えます。
ここでどうしても避けたい演奏は:
1 ソプラノとアルトの音質や音量が全く一緒であること。
2 ソプラノとアルトの各声部が歌のラインとして扱われないこと。
の2つです。ソプラノとアルトが混同してしまい、しかも機械的な硬い演奏で、歌心の欠片も無い演奏だけは避けるようにします。テーマが出てくるところは、テーマ自体が器楽的ですので、それはそれで良いのですが、テーマが出てこないところは、歌のラインもあることを念頭に置いて下さい。