作品概要
解説 (2)
演奏のヒント : 大井 和郎
(552 文字)
更新日:2023年11月20日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (552 文字)
バッハのF-durという調は、インベンション、シンフォニア、イタリアンコンチェルト等からも解るとおり、とにかく主張の強い調であり、その中で楽しさが満載され、活気に満ちあふれてている調です。このプレリュードもそのような意味で、アレグロ以上のテンポが望ましく感じます。
冒頭、2小節単位で左右が入れ替わりますが、1~2小節間であれば、2小節目の3拍目に、3~4小節間であれば、4小節目の3拍目がそれぞれのゴールとなります。それぞれのゴールに行くまで、順次進行でメロディー音は上行します。何か、楽しみで、わくわくし感が抑えられないような気持ちの描写とお考え下さい。
5~8小節間、左手がどんどん上行し、Cまで到達したら、今度はそこから下行します。クレッシェンド、ディミヌエンドで処理してください。
8小節目3拍目から10小節目2拍目までが2つの上行形シークエンスと考え、クレシェンドをかけ、10小節目の3~4拍感に達し、今度は、そこから5つの下行形シークエンスを経て13小節目に達します。徐々にディミヌエンドで良いと思います。
13小節目3拍目より、カデンツを迎え、14小節目3拍目がピークと考えます。最後15小節目は少しだけゆっくりのテンポで威厳を持って終わります。
全体を、楽天的で楽しく弾くように心がけてください。
解説文 : 熊本 陵平
(1179 文字)
更新日:2025年1月16日
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解説文 : 熊本 陵平 (1179 文字)
三部構成と捉えることができる。
I(1から4小節)
II(5から8小節)
III(8小節3拍目から15小節)
・構成に対する考察
インヴェンションで見られる構成と同じく、1から4小節の主題提示が行われた後に、主題展開として5小節目からゼクエンツを迎える。
8小節目3拍目から10小節目2拍目において別のゼクエンツ、Ⅰ→Ⅳ:Ⅱ→Ⅴ(4度の上行ゼクエンツ)が見られるが、5小節目と異なるパターンであり、新しい楽節の始まりだと考えられる。10小節目3拍目より属音によるオルゲルプンクト(保続音)が始まるが、これは楽曲の終結としてよく用いられる手法である。
・主題の特徴
16分音符と八分音符の反復的モティーフによる2声部構成。冒頭1小節目一拍目に16分休符を置くことによって、よりリズムが起伏に富んでいる。モティーフの元の形はf-c-a-cというアルベルティバスのような音形であるが、この最初のfを削って休符を置くことでリズム的面白さを引き出している。これはバッハがよく使う手法で、例えばインヴェンション1番や13番の冒頭でも見られる。
主題全体として音価の長い音符で構成はされておらず、いわゆる歌らしい旋律ではなく、反復的モティーフが繰り返されることによって運動が感じられる。これは例えば平均律一巻1番と2番のプレリュードにも見られる手法で、反復的動作を繰り返しながら少しずつ和声や音程、音形パターンなどを変化させて進ませていく。全体の流れとして規則的なリズムの中で明るさや翳りなど細やかな表情が見込まれる。
・演奏における作品の構造上の注意点
バロック音楽においてはしばしば古典派以降の音楽に比べて、楽曲の途中で明確な終止が見られなく、楽節の区切りが分かりにくいことがある。例えば、8小節目3拍目はその前の属7和音からすればそれを解決する主和音であるが、同時に新しい楽節の新しいゼクエンツの開始和音でもある。
このような場合、前楽節は属7和音(8小節目2拍目)で切って、次の主和音(8小節目3拍目以降)は次楽節の始まりとして演奏されることはしばしば解釈として聞く。全てがそうであるとは限らないが、本作品においてはこのように演奏されることによって構造がより明確に示されるのではないかと思う。
15小節は非和声音が絡み合った終止定式となっていて作曲学的書法としては面白いが、不協和音程によって解決されない響きが続くため、ここをリタルダンドなどでゆっくり演奏してしまうと嫌な響きがクローズアップされてしまうので注意したい。和声の動きは感じつつも、下行する旋律線g-f-(f)-eの横の流れを意識したい。
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