close
ホーム > バッハ > フーガ イ短調

バッハ : フーガ イ短調 BWV 947

Bach, Johann Sebastian : Fuge a-moll BWV 947

作品概要

楽曲ID:2254
出版年:1847年
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:フーガ
総演奏時間:3分40秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

執筆者 : 朝山 奈津子 (616 文字)

更新日:2007年10月1日
[開く]

19世紀の出版譜(ライプツィヒのペータース社によるバッハ鍵盤作品全集、グリーペンケルル校訂、1847年刊)より古い資料がいっさい失われているため、真贋が疑われる作品。初版となった校訂譜は、フォルケル所蔵の手稿譜に基づいて作られた。

資料状況からバッハの真作であることを証明するのはきわめて困難である。が、様式や書法が単純である、ということは偽作の決定的な証拠にはならない。「フーガ」というタイトルをはずしてみれば、《カプリッチョ》BWV993などと構造上の類似点が見出せるからである。また、八分音符の連打で上行する主題はオルガン用の《幻想曲》BWV571ときわめてよく似ており、曲の後半で平進行や伴奏風の和音が多用されるところも、共通している。

この曲には対比的な3種の動機が見出せる。主題の始まりを確実に知らせる八分音符の同音連打、回音を連ねて徐々に上行・下行する十六分音符、そしてダイナミックな分散和音である。分散和音は曲の終盤にようやく現れる。すると、それまで足踏みしながら少しずつ進んできた音楽が一挙に広がりを持って流れ出す。やがて伴奏も、それまでの楔のトゲのような前打音を吸収して、滑らかな四分音符の連結に昇華される。(このとき特に現代のピアノでは、和音が鋭く、あるいは重くならないよう注意しなければならない。)

フーガとしてみればこのような構成はあまりに単純に過ぎるのだが、闊達なリズムをよく生かした簡潔で愛らしい作品である。

執筆者: 朝山 奈津子

演奏のヒント : 大井 和郎 (684 文字)

更新日:2023年11月20日
[開く]

バッハに限らず、どの作品に関しても共通して言えるピアノの特性をお話しします。ピアノは他の、弦楽器や声楽などに比べて極端に非音楽的な楽器です。それには多くの理由がありますが、その中の1つとして、同じ音の連打という問題があります。

同じ音の連打というのは、全く同じ強弱レベルで、全く同じタイミングで同じ音を連打した場合に起こるお話になります。これをやってしまうと、ピアノという楽器は極端に機械的に硬くきこえるようになります。

このフーガの冒頭も連打音があります。1小節目を例に取ります。冒頭、A3つ、その次に、Hが3つあります。筆者の見ている楽譜には1小節目の4拍目に向かってクレシェンドが書かれておりますが、勿論これはバッハが書いたものではありません。この楽譜を編集した人によるものですが、強ち間違ってはおりません。冒頭の連打音を全て同じレベルで弾くことで、非音楽的な演奏になります。

このフーガのテーマ(主題)の向かう音は、2つあります。1小節目を例に取ります。1つ目のゴールは2小節目1拍目表拍のCです。ここに向かって行く感じを出しますので、連打音のAとHがそれぞれ、同じ音量にならないように注意してCに向かいます。

2つ目に向かう音は3小節目のEです。1つ目のゴールにたどり着き、そこで一度音量を落として2拍目のAで終わります。そしてこの2拍目のAから、今度は3小節目のEに向かって再びクレシェンドをかけます。1つ目のゴールと2つ目のゴールを比べたとき、明らかに2つ目のゴールの音が1つ目より大きくなるようにして下さい。以降、テーマが出てきたら同じように処理してください。

執筆者: 大井 和郎
現在視聴できる動画はありません。  

楽譜

楽譜一覧 (0)

現在楽譜は登録されておりません。