バッハ : 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第17番 前奏曲とフーガ BWV 862 変イ長調
Bach, Johann Sebastian : Das wohltemperierte Clavier, 1 teil, 24 Praludien und Fugen Prelude und Fuge Nr.17 As-Dur BWV 862
作品概要
解説 (1)
演奏のヒント : 大井 和郎
(1595 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1595 文字)
第17番 変イ長調 BWV862 プレリュード: このプレリュードは元気の良さが命です。このプレリュードを極端に遅く弾いたり、重く弾かないようにします。筆者は、かなり遅いテンポのヴァージョンを生で聴いたことがあり、それはそれで様になっていましたが、通常快速的なテンポの方が弾きやすいと思います。故に、アーティキュレーションは、8分音符を全てスタッカートにして良いでしょう。このプレリュードのキャラクターが如何に楽しいものであるかは、例えば22小節目からの左手の16分音符や、24小節目の右手の16分音符などを見ると解りますね。 冒頭1-2小節間、シークエンスのようなメロディーが出てきますが、この2つのテンションの違いを表現しましょう。1小節目よりも2小節目の方を大きめに弾きます。8小節目に至って、右手の音は高いBまで達します。そこから徐々に下行して13小節目で最も音量を落とします。 以降、シークエンスや調性などでダイナミックや音質をコントロールしながら平坦にならないように気をつけます。ところでこのプレリュードには難関な箇所があります。28-29小節間の左手で、多くの学習者がここで悩みます。相当難しい箇所ですが、一応筆者の指番号を書いておきます。ご参考まで。 28小節目 4353 4212 1241 29小節目 4353 5432 1242 フーガ: 演奏によっては大変壮大なフーガです。テーマは1小節目Asから始まり、2小節目の1拍目右手Esまでの7つの音と仮定します。ここから先は筆者の独断な分析になります。最初のターゲットを10小節目とします。ここでAs-durを主調と感じさせるテーマがテノールに出てきます。ここまでの道のりはpから徐々にクレシェンドして行きますが、6小節目、4拍目のソプラノAsに注目して下さい。このAsを順次進行に下行して追っていきますと次に7小節目、G F と来て、8小節目 Es、9小節目、Des C B そしてターゲットの10小節目にAsとなります。ラインは下行していますが、テンションはどんどん高まっていくと考えて良いと思います。 10小節目以降、右手16分音符でシークエンスが下行していきますね。この辺りのダイナミックコントロールは奏者に任せます。13小節目に登場するF-mollの主題が、奏者にとって如何なるダイナミックに感じるかによっても、シークエンスの処理方法が変わってきます。もしもF-mollの主題が大きいものと感じるのであれば、11-12小節間はクレシェンドをかけても構わないと思います。 F-mollの主題が出た後は、B-mollの主題となり、F-mollとB-mollと比べた場合、どちらのテンションがより高いか、も奏者に委ねられます。21小節目は、テーマのストレッタが見て取れます。 そして23小節目において、長調に戻るのですが、恐らくこの23小節目はこのフーガの中で最も音量の落ちるところかもしれません。 なぜなら、この小節を境に33小節目のゴールを目指すため、テンションを徐々に上げていかなければならないからです。33小節目にたどり着く前に、もう1つのゴールである27小節目、As-durのテーマにたどり着きます。ここのダイナミックは大きいです。それにも関わらず、30小節目からのシークエンスは明らかにクレシェンドです。そして33小節目のカデンツにたどり着きます。 よくこの33小節目で音量を落としてしまう奏者がいます。3拍目の和音をご覧下さい。これはviの和音です。I ではありません。仮に I であればまだダイナミック的には弱いかもしれませんが、viのインパクトは大変大きく、予想を裏切る和音です。ここはフォルテで構いません。そして34-35小節間、テンポを若干緩くし、重々しく、壮大に終わります。
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