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バッハ : 幻想曲 ト短調 BWV 920

Bach, Johann Sebastian : Fantasie g-moll BWV 920

作品概要

楽曲ID:2244
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:幻想曲
総演奏時間:7分50秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

執筆者 : 朝山 奈津子 (330 文字)

更新日:2008年5月1日
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6部分から成る長大な作品。長いということそれ自体がこの曲の特徴であり、また欠陥でもあろう。ドイツの伝統的なトッカータやファンタジーに明確なT-F-T-F-Tの構造をとらないが、第2・4・5セクションは両手の模倣で始まる。いっぽう、セクションの切れ目など随所で分散和音が2分音符で示され、即興風の処理が求められている。鍵盤の幅をいっぱいに使う両手の分散和音や模続進行による無窮動のパッセージなど、常套句が多用され、並列されている。いささか冗長の感も否めない。

しかし、用いられる和音や和声の進行には――バッハの典型と呼びがたいものが多いにせよ――色彩感ある大胆な響きがときおり光射すように顕れる。真作であるかどうかはともかく、演奏効果は充分に期待できる作品である。

執筆者: 朝山 奈津子

演奏のヒント : 大井 和郎 (842 文字)

更新日:2023年9月14日
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G-mollの幻想曲です。この幻想曲に特に必要なものは「方向性」です。このタイプの曲が平坦に弾かれてしまうと、本当に間延びしますし解りにくい演奏になります。方向性を持つためには、和声的な分析も必須です。例えば3小節目3拍目から始まるアルペジオの和音ですが、全部で15個の和音がありますね。この和音を3つのグループに分けます。

1つ目 最初の5つの和音

2つ目 6番目から6つの和音

3つ目 最後の3つの和音

1つ目のグループを見てみましょう。1つ目の和音から2つ目に移るとき右手真ん中の音DがEsに上がります。3つ目の和音から4つ目に移るとき右手真ん中のEsからDへ下がりますが、左手の和音は真ん中の音がCからDに上がります。和声楽上、右手にC-D、左手にもC-Dと書いてしまうと「平行8度」という禁則になりますので、バッハはこれを避け、EsからDに降りてくる形を右手に書いています。しかし実際は左手のように、C-Dと人の耳には残ります(左手も助けるからです)。そして4つ目の和音から5つ目に行くとき、右手一番下のCが次の和音でBに降りてきますね。

この動きを追うと、D-Es-C-D-B という音形になります。そうすると2番目の和音が最も高い位置にあることになり、そこからテンションが徐々に下がってきて5つ目に達すると考えます。故に、1つ目から2つ目の和音に行くときに最も音量を上げておき、あとは徐々に下げて最後にトニック(主和音)に進むと考えます。

2つ目のグループも同じように分析します。そしてこんどは1つ目のグループと2つ目のグループを比べてみます。2つ目のグループの方が明らかにテンションが高いですので、その対比を強弱で出します。そして3つ目のグループは最もテンションが高いという風に仮定しますと、これでこの15個の和音全てに方向性を持たせることが可能になります。こうした分析を行い、全てのセクションに方向性を持たせること、平坦な演奏を避けます。これが

この曲を演奏するヒントになります。

執筆者: 大井 和郎
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