作品概要
出版年:1843年
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:幻想曲
総演奏時間:1分15秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : 朝山 奈津子
(553 文字)
更新日:2007年9月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (553 文字)
プレラーの手稿譜に伝えられる。(ヨハン・ゴットリープ・プレラー(1727-1786)はバッハの弟子の世代に当たる音楽家で、彼と兄弟弟子ヨハン・ニコラウス・メンペルが作成したオルガンとクラヴィーアのための楽譜帖は、バッハの創作を再構築する上で重要な資料となっている。)プレラーは作曲者を「ベルンハルト・バッハ」としており、この名に当てはまる作曲家としてはJ.S.バッハの再従兄弟でアイゼナハで活動したヨハン・ベルンハルト(1676-1749)か、あるいはJ.S.バッハの夭逝した息子ヨハン・ゴットフリート・ベルンハルト(1715-1739)が考えられる。アイゼナハのヨハン・ベルンハルトとする説が一般的だが、音楽内容がJ.S.バッハにきわめて近いことから、バッハの息子の作、あるいは誤って伝えられているだけでバッハ自身の作品である可能性は棄てきれない。
全体は2声、わずか25小節の簡潔な作品だが、順次進行と跳躍、上行下行と同音反復を適度に含むバランスの取れた主題を持つ。J.S.バッハはこうした可能性の豊かな主題をひらめく天才だった。また、主題の前半と後半を対位法的に組合せるやりかたは、まさに「インヴェンション」と呼ぶにふさわしい。作曲者をあれこれと詮議するまでもなく、短く引き締まった理知的な作品である。
演奏のヒント : 大井 和郎
(595 文字)
更新日:2023年9月14日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (595 文字)
バッハのc-mollという調性は楽しい曲も含まれますので、決して深刻ではありません。むしろ楽天的と捉えても間違いではありません。この幻想曲も例外では無く、どちらかと言うと機嫌の良いバッハの作品と捉えます。
よって、この曲をあまりゆっくりに弾いてしまうと、キャラクターが変わってしまいます。アレグロくらいで丁度良いと思います。
故に、アーティキュレーションは8分音符をスタッカートとして切ることをお勧めします。この時、あまり重たいスタッカートよりは軽快な短いスタッカートの方がこの曲にはマッチします。
テーマは1小節目の右手がテーマになります。このテーマが出てきたらはっきり聴かすようにします。テーマはg-moll、Es-dur等に変化します。テーマ以外の場所は殆どがシークエンスになりますので、くれぐれもそのシークエンスを平坦な強弱で弾かず、下行、上行、ともに方向性を持たせ、シークエンスの強弱をユニット毎に変化させます。
2声のバランスは、常にどちらかの声部がどちらかよりも大きい、または小さい方が聴きやすくなります。基本的には、音価の大きい音符の方を大きくするとわかりやすくなりますが例外もいくらでもありますので、それは奏者の判断に委ねられます。
1箇所、とても出しにくいラインが18小節目にあり、これは左右の手が交差するので弾きにくいのですが、ここは8分音符をはっきりと聴かせて欲しい場所です。