バッハのc-mollという調性は楽しい曲も含まれますので、決して深刻ではありません。むしろ楽天的と捉えても間違いではありません。この幻想曲も例外では無く、どちらかと言うと機嫌の良いバッハの作品と捉えます。
よって、この曲をあまりゆっくりに弾いてしまうと、キャラクターが変わってしまいます。アレグロくらいで丁度良いと思います。
故に、アーティキュレーションは8分音符をスタッカートとして切ることをお勧めします。この時、あまり重たいスタッカートよりは軽快な短いスタッカートの方がこの曲にはマッチします。
テーマは1小節目の右手がテーマになります。このテーマが出てきたらはっきり聴かすようにします。テーマはg-moll、Es-dur等に変化します。テーマ以外の場所は殆どがシークエンスになりますので、くれぐれもそのシークエンスを平坦な強弱で弾かず、下行、上行、ともに方向性を持たせ、シークエンスの強弱をユニット毎に変化させます。
2声のバランスは、常にどちらかの声部がどちらかよりも大きい、または小さい方が聴きやすくなります。基本的には、音価の大きい音符の方を大きくするとわかりやすくなりますが例外もいくらでもありますので、それは奏者の判断に委ねられます。
1箇所、とても出しにくいラインが18小節目にあり、これは左右の手が交差するので弾きにくいのですが、ここは8分音符をはっきりと聴かせて欲しい場所です。