作品概要
解説 (1)
解説 : 林川 崇
(994 文字)
更新日:2019年1月15日
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解説 : 林川 崇 (994 文字)
Nocturne Op.9 No.3
ショパンのノクターンの中で唯一、Allegrettoという快速なテンポが指示された曲であり、また小節数は彼のノクターンの中で最も多い(158小節)。形式は、他の多くのノクターンと同じくA-B-A’-コーダという三部形式をとるが、Aは更に、a-a-b-bに分けられる。aの出だしは、歌うというよりは飛び跳ねるような軽快な主題であり、「おどけて」Scherzandoという楽想用語が用いられている。aの13小節目で、それまで飛び跳ねていた所に、突如espressivoと指示された嬰ヘ長調の歌が入ってくるが、すぐにロ長調に戻って落ち着く。この主題が装飾を増やした形でもう1度繰り返されると、一貫してなだらかな歌が歌われる嬰へ長調のbに入る(第41~64小節)。このbの最後の8小節は、aのそれがそのまま使われている。bもまた、装飾を増やして繰り返される。第87小節目に現れる最後の上昇音型にはppの指示があり、夢見心地な雰囲気を作るが、その最後の音には、それまで、長調だったdis(譜例1)に代わって、短調の、しかもアクセント記号の付いたdが置かれ(譜例2)、音楽は、突然聴き手を突き放すように、2/2拍子の激情的なロ短調の中間部に入る。
譜例1 第63~64小節
譜例2 第87~88小節 Aの末尾とBの入り
ここでは、強弱記号が頻繁に入れ替わり、行き場のない不安定感を醸し出す。そして、感情が頂点まで高まり、ロ短調のドッペルドミナントに終止すると、我に帰ったかのように、Aの最後の2小節が現れる(譜例3)。
譜例3 第129~133小節 Bの末尾とAの回帰
ここでは、前述の上昇音型の最後の音は、dの異名同音のcisisだが、その時点では音楽はまだ短調のため、暗い展開が続くかの印象が与えられる(譜例3、3小節目)。しかし、そのcisisを経過音として、明るい主部に戻り、aの部分が再現される。
譜例1、譜例2に示した上昇音型のモチーフは、第150小節において11連符に拡大され、1オクターヴ上まで衝動的に駆け上がり(譜例4)、激しさを増したところで、短いコーダに入る。
譜例4 第148~151小節
そしてすぐV度に落ち着くと、第2番同様、右手のカデンツァが登場し、最後は、それまでと全く曲想の異なるAdagio、4/4拍子の両手のゆったりとしたアルペジオで終わる。
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