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ショパン : ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2

Chopin, Frederic : Nocturne No.2 Es-Dur Op.9-2

作品概要

楽曲ID:21883
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:3分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4

楽譜情報:116件
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解説 (2)

解説 : 林川 崇 (830 文字)

更新日:2019年1月15日
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Nocturne Op.9 No.2

言うまでもなく、ショパンのノクターンの中で最も知られたもので、ショパンの死後、ヴァイオリン、チェロ、声楽用などの編曲が盛んに作られた。

曲のフレーズは最後の2小節を除けばすべて4小節のフレーズから成っており、以下のように図式化される。

全体を通じて、左手が一貫して同じ伴奏型を続け、その上で右手の旋律が歌われる。変ロ長調のBの部分は2回ともほぼ同じ形で表れるが、AおよびCの部分は出てくるたびに違った装飾が施されている。このような旋律の装飾法は、当時のオペラ・アリアの演奏習慣に由来するもので、声楽を愛したショパンはこれを積極的にピアノ演奏に取り入れた。この装飾は、ショパン自身、毎回違うように弾いたらしく、そうした出版譜と違った変奏が、あるものはショパン自身の演奏を書き取ったものとして、またあるものはショパンが弟子の楽譜に書きこんだものとして、多数残されている(こうした資料が多く残っているケースは、ショパン作品にあっては珍しい。中には、右手が最高音域から3度の半音階で下降するというものもある)。ドラクロワをはじめとするショパンの取り巻きたちは、この即興性や演奏のたびに音色を自在に変化させる能力にショパンの才能を認めている。こうした彼の演奏習慣は、「楽譜通り」の演奏を基本とする演奏美学と大きく異なる点である。

平明なAに対し、Bの部分では、1小節目で、変ロ長調のVの第一転回形に行ったかと思うと、次の小節で、バスが半音下がって変ホ長調のIV-Iと進行(譜例1, 第10小節)し、また、バスが半音上がって変ロ長調に戻り、安定したかと思うとAに戻る直前で唐突に半音階的和声(譜例2)が現れるなど、何か彷徨うような和声がコントラストを成している。ショパン作品全般を特徴づける「彷徨う和声」もやはり、ある程度はショパンの即興的なセンスから導きだされたものであろう。

譜例1 第9小節~第10小節

譜例2 第11~12小節

(林川 崇)

執筆者: 林川 崇

演奏のヒント : 大井 和郎 (1544 文字)

更新日:2018年3月12日
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第2番 Op.9-2 Es-Dur

あまりにも有名なノクターンですが実は怖いノクターンで、この曲を聴いただけでそのピアニストの奥深さがわかってしまいます。技術的にはさほど難しくありませんが、音楽的に難しい曲です。ショパンという作曲家、一見ホモフォニーの要素が強いようにも感じますが、実はポリフォニーの大家です。このノクターンの左手の伴奏、単に和音を並べただけではなく、2音構成の和音と、3音構成の和音とで、それぞれ横のラインが緻密に流れているのです。長くなりますので今ここで の分析は控えますが、それほど緻密に出来ていることだけご承知おきください。

1小節目のメロディーラインだけを分析すると単純に、G F Es とGからこの調の音階固有音をたどって単純に下行してきているのがわかります。1小節目がG F Esであれば、2小節目はC B Asであることがわかりますね(今、大事な音だけをピックアップしています)。このように大雑把に考えた時、1小節目のEsはFより弱いべきであるし、FはGより弱いべきであるのが自然です。GとFに関しては議論があるかもしれませんが、Esに関してだけは完全な和音の解決ですので、決してこの音には力を入れないようにします。同様に、2小節目のAsにも力は入りません。

さて3-4小節目を1つのくくりとしても構いませんし、2つの別のものと考えても構いません。仮に、2小節ひとまとめで考えた時、1小節目、2小節目、3-4小節目、という3つのフレーズで一区切りであることがわかります。そしてそれぞれのフレーズは異なったムードですので、異なった音量や音質で区別をつけます。4小節目はカデンツの部分ですので、テンポ的にも少しゆっくり目に落とし、1拍目メロディーのBからオクターブ以上上のDに飛ぶ時、時間をたっぷり取りま す。そして2拍目、ショパンは低いBをバスに書いています。ここも決して急がず、ゆったりと時間をとってください。

テクニカリーに、この4小節間で注意する大事なことは2つあります。1つはバランスの問題で、左手が決して大きくならないように音量を落とします。バスを落とすというよりは、内声を落とします。もう1つはルバートの話です。筆者はこの演奏で最も酷い演奏を聴いた時、ラジオ体操を思い浮かべました。このノクターンだけではなく、ショパンのすべての曲にはルバートが必要になります。つまりは、人の期待に反するタイミングがルバートのコツです。左手の8分音符は何があっ ても同じタイミングが続かないように注意してください。常にタイミングを変化させて下さい。

その他、基本的に奏者が感じなければならないことは、和音の性格です。これがムードを変化させます。例えば、1小節目2拍目の和音はHDFAsになります。バスのEsはペダルポイントですので、カウントしません。この2拍目の和音がもしかして、BDFAsでも音楽になるでしょうし、EGBでも音楽になり得ます。しかしここでショパンがHDFAsを使ったことにより、独特のムードが出ますね。4拍目、バスは本来Esであるべきです。しかしショパンは次の小節のCに向かうために経過音Dを書いています。このDがメロディーのEsと重なって独自のムードを出します。ちなみに、このDをEsに変えて演奏してみてください。曲になりますが、なんともそっけないことがわかります。

2小節目、ドミナントのCEGBの和音の次に借用和音のviiが来て、4拍目でiiに解決します。ムード的には少し表現が強い部分ですが、結局3-4小節目の「喜び」に結びつきます。

以降、このように、和音の性格を考え、ショパンがどのようなムードを再現したかったのか、考えることが必要になります。

執筆者: 大井 和郎

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