ショスタコーヴィチ : 子供のノート(7つのピアノの小品) 楽しいお話 Op.69-4
Shostakovich, Dmitry Dmitrievich : A Child's Exercise Book "Merry Tale" Op.69-4
作品概要
解説 (3)
演奏のヒント : 杉浦 菜々子
(392 文字)
更新日:2024年3月11日
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演奏のヒント : 杉浦 菜々子 (392 文字)
密度の高いしっかりとした音で演奏しましょう。
「楽しいおはなし」というタイトルから軽やかなタッチで、気楽な音楽をイメージする方もいらっしゃるかもしれませんが、ロシア語でまくし立てているイメージの方が近いかもしれません。例えば、ショスタコーヴィチ交響曲第10番の第2楽章では、管楽器、木管楽器、弦楽器、打楽器が怒濤の如く「おはなし」します。そうしたオーケストラ作品などからも音質のイメージを得てみてください。
また、意表を突いた音が度々登場する面白さを十分に表現してください。
演奏者自身が、それらの意表を突いた音に振り回されるように演奏すると、それらの音は効果を発揮すると思います。演奏者は十分に練習を積み、既に次に何の音がくるかわかっているものですが、あたかも初めて知ったかのような驚きと新鮮さを持って、それらの音を適切に際立たせて演奏することで、曲が生き生きとしたものになると思います。
演奏のヒント : 大井 和郎
(458 文字)
更新日:2024年6月17日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (458 文字)
ある作品を演奏する場合、その作曲家の他の作品も聴いて、スタイルを理解することは、その作曲家の「言語を理解する」という意味があり、大変重要で不可欠です。
例えば無名の(聞いたことが無いような)作曲家の作品を演奏するとき、そしてその作曲家の他の作品に触れる機会を持てない場合、奏者はその作品のみから色々想像を働かせなければなりません。その作曲家が、何処の国の作曲家であるか、いつの時代の作曲家であるか、誰に影響を受けたのか、専門の楽器はあったのか、等々、できる限り情報を集めるべきです。
しかし、このショスタコービッチのような有名な作曲家の場合、多くの彼の作品に触れることが可能です。ショスタコービッチを初めて演奏する学習者は、必ず、ショスタコービッチの他の作品に触れてください。彼の交響曲を聴いて下さい。そしてスタイルを少しでも理解してください。
すると、同じメロディーラインでも、例えばここはフルート、クラリネット、ファゴット、等のオーケストレーションが頭の中できこえてくるはずです。それが作品を理解することに繋がります。
解説文 : 熊本 陵平
(943 文字)
更新日:2024年11月28日
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解説文 : 熊本 陵平 (943 文字)
楽曲構造は三部形式である。
A[a(1から8小節)+a1(9から16小節)]
B[b(17から24小節)+b1(25から32小節)]
A1[a2(33から40小節)]
終結部は8小節省略されており、簡潔な構成である。
主題構成としては、下行上行の分散和音線、トリルのようなモティーフ、半音階による順次進行で目まぐるしく変化に富む。単音による構成で、三和音は形成されず、比較的高い音域でスタッカートが多用されるため、全曲通して音色としては軽やかな印象を与える。
29から30小節ではそれまでに存在しなかった新しいリズムモティーフを見るが、これは29から32小節までの動き全体を考えると主題に戻るための移行楽節であり、また29から30小節ではゼクエンツとなっているため、ここを新しい要素としてクローズアップした表現は不自然に聞こえかねない。古典派のソナチネでもしばしば再現部に到達する直前に見られる移行楽節と似たようなものだと捉えられる。
33小節から主題の再現となるが、冒頭の提示と比べると上下逆となっている。バッハなどでも見られる転回するポリフォニーであり、ここも合わせて翻って考えると主題は2声のポリフォニーなので、左右のバランスに気をつけたい。
近現代の音楽においては、和声の機能拡充がなされた果てに機能崩壊となり、やがて無調の流れとなるわけだが、本作品は和声の機能はかろうじて保ちつつも、半音階関係による転調、移行が多用された結果として和声の緊張と緩和が曖昧となっている。明確なものは部分的であり、カデンツ最初の主和音からゼクエンツによるパターン進行或いは半音階進行を経て属和音による半終止、或いは終止定式をもって全終止を迎える。
このため、和声の機能表現(緊張と緩和)を中心とした解釈よりも、あまり難しいことは考えずに単純にその明暗差であったり上下行による音形動作の印象を軸とした解釈の方が作品の性質に沿った表現ができるのではないかと考える。こういった点からも、ショスタコーヴィチ作品の入門的楽曲と位置付けられるだろう。
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