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ヘンデル :インパーティネンス ト短調 HWV494

Händel, Georg Friedrich:Impertinence g-moll HWV494

作品概要

楽曲ID:20136
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:種々の作品
総演奏時間:0分40秒
著作権:パブリック・ドメイン
原曲・関連曲: 曲集・オムニバスプレ・インベンション

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:応用1 応用2 応用3 応用4 応用5

楽譜情報:9件

解説 (1)

演奏のヒント : 大井 和郎 (1654文字)

更新日:2018年3月12日
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この2声の単純な曲は音楽的にとても難しい曲だと思います。音数が少ない分だけ音楽的に難しくなります。全体を通して述べますと、レガート奏法は必須になります。よって、オーバーラップ奏法なども取り入れて良いと思います。そしてこの楽譜には一切のダイナミックマーキングが書かれていませんが、ダインミックの変化も当然必須になります。

それでは冒頭から順を追って説明していきましょう。まず前半・後半は明白だと思います。前半のフレーズは3つで、1-2小節間、3-4小節間、5-8小節間の3つになります。さて、これはフーガにもカノンにもなり得ない書法ですが、2声で書いてあってそれらは独立していることは確かなことです。つまり、メロディーの下に伴奏があるという書き方ではありません。両声部ともメロディーと考えます。従って、どちらかが極端に弱くなるようなことはないのですが、全く同じ音量、同じ音質で果たして良いかどうかは疑問です。幾分左手を控えても良い気がしますが、その辺りは先生方のご判断に委ねたいと思います。

いずれにせよ、両声部とも、筆者であればレガートで演奏します。1-2小節間、1小節目の2拍目のBが最も大きい音になり、2小節目3拍目のDに向かって衰退してきます。同時に左手は2小節目3拍目のBに向かって行き、それを過ぎてから衰退します。

3-4小節間、1-2小節間よりも音量は若干大きくします。この場合、3小節目のCに向かって行き、Cから4小節目3拍目のGまで徐々に衰退させます。要するに1-2小節間のシークエンスになります。4小節目の左手1拍目のGは、前の小節のFIsが解決したと考えますので、Gにはアクセントを付けません。新たに4小節目2拍目より左手のフレーズが始まる感じにします。

5-8小節間、1つのフレーズではありますが、右手は、6小節目の3拍目Fを最も小さくします。5-6小節間は、1-2、3-4のシークエンスと考えます。そして、6小節目4拍目のDから始まり7小節目Es、または、3拍目トリルのCにゴールを持って行きます。前半で最も音量が大きくなるのはこの部分です。8小節目Dは解決音ですので、前の小節のCよりも若干落としますが、このカデンツ(終止形)は、ドミナントで終わっています。決して安心できる部分ではありませんので、pp等、極端に弱くならないようにします。

9-10小節間、少し「迷い、安心感」など、今までとは異なったムードの2小節間を過ぎた後、そのシークエンスが来ます。11-12小節間です。9-10の迷いの解決のようなムードでもあります。その後もう1回シークエンスが来ますが、今度は9小節目と11小節目の素材のみが2回続けて(13-14小節間)、そして15-16小節間がカデンツになりますので、13-16小節間をひとくくりに考えます。9-12小節間の穏やかなシークエンスとは打って変わって、13-16小節間はムードが一変します。

この曲でも最もダイナミック的に大きくなる部分は17小節目だと思います。最高音のBに達しますね。そしてそこから徐々に20小節目までdiminuendoで良いと思います。17小節目がピークになるのにも関わらず、16小節目の3拍目右手のDは、前の音のFisより若干小さくします。  次に、トリルの注意です。トリルは2箇所。7小節目と19小節目です。ここからあくまで筆者の個人的見解になります。担当の先生方はこれら2箇所のトリルをどのように処理するかご研究下さい。筆者であれば、まず7小節目は DCDC という速いトリルを最初に4つ弾き、最後のCを伸ばし、8小節目のDに達する手前でもう1つDを入れます。つまりは、DCDC D というトリルにします。

19小節目、本来は2拍目最後の音であるBとは異なるAから始めるべきトリルかもしれないのですが、ここも、7小節目と同じように処理し、BABA G と弾いて、次の20小節目のGに達します。  なお、アーティキュレーションは基本的に自由です。

執筆者: 大井 和郎